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発達障害者向け就労支援 全国45カ所のハローワークに専門相談員 

(2010年12月16日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

派遣先転々…失業 中高年の多くに疑い

画像「職探しは長所と得意分野を見極めて」と話す就職チューターの川北勉さん=名古屋市中村区のハローワーク名古屋中で

 仕事をなくし、貧困に直面する人たちの中に、発達障害と思われる人たちが多くいる。社会的な支援を受けられず、派遣の仕事を転々とした後、不況で仕事を失うのが典型例だ。各地のハローワークや、発達障害者支援センターでは、就労に向けた支援が始まっている。(市川真)

 「仕事が遅いと、しかられ続けた。それが劣等感になって、うまくしゃべることができなかった」。派遣先の工作機械の梱包(こんぽう)の仕事を、1カ月で辞めた愛知県の男性(29)は振り返る。

 普通科高校を卒業したときは、就職氷河期。プレス関係会社の入社試験で不合格となり、母親が店長をしていた小売店で手伝いを1年半。その店もつぶれ、派遣の仕事を転々とした。人間関係で辞めざるを得ないことが多く、梱包の仕事は7カ所目だった。

 半年前、通院する心療内科でうつと社会不安障害と診断され、カウンセラーから「もともとは発達障害だったかも」と言われている。中高生のときから、対人不安とマイナス思考が強かったという。男性は「自分に合った仕事を探したいが難しい」と話す。

 生活困窮者への住居や物資を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京都新宿区)には、派遣切りなどで住む場所を失った人たちが次々支援を求めてくる。「発達障害を疑われる人たちが相当数いる」。スタッフの1人は印象を語る。

 稲葉剛理事長は「中高年世代にはもともと発達障害という概念自体がなく、以前は、そういう人たちも労働市場に社会の一員として受け入れられ、働くことができた。それがリーマン・ショック以降、最初に切られることになったのでは」と語る。派遣の仕事を解雇になり、労働組合に相談が持ち込まれることもある。

雇用先の定着に取り組む団体も

 全国のハローワークや、都道府県と政令市にある発達障害者支援センターなどには、発達障害と思われる就労希望者から相談が多く寄せられる。発達障害の人は一般就労と同様、ハローワークなどで職探しをするほかに、障害者手帳を取得し、障害者雇用として就労できることもある。

 ハローワークを訪れても、自分の障害やその特性を企業側に伝えずに就労を目指す例が多い中、全国45カ所の窓口では、専門の就職チューターが相談業務に携わっている。

 「長所や得意分野を見極めて仕事を選ぶことが大切」と、ハローワーク名古屋中(名古屋市中村区)の就職チューター川北勉さん。仕事が覚えられなかったり、社内や取引先とコミュニケーションがうまく取れなかったりして、転職を繰り返す人もいる。川北さんは、面接に半年ほどかけ、相談者と信頼関係をつくったうえで、職業訓練や就職試験に二人三脚で臨む。

 就労を果たしてもすぐに辞めては意味がないとして、定着支援に積極的に取り組む団体も。なごや障害者就業・生活支援センター(同)の支援の対象は、発達障害の確定診断を受けた人。1週間程度の企業研修を実施し、「仕事が本人の負担にならないか」「企業側にとってその人は戦力となるか」などを双方が見極めてから、雇用契約を結んでもらう。その後も定期的に相談に乗り、定着率の向上を目指す。

 関東地方のある発達障害者支援センターの相談員によると、発達障害ではないと思われる人が「自分は発達障害なのでは」と相談してくることも多いという。発達障害に関する断片情報があふれ、発達障害に原因を求めやすい風潮も強まっているというのだ。

 この相談員は「障害というほどではなく、その人の個性ととらえた方がいい人も多い。そういう人の対応に追われると、本当に支援が必要な人への対応が手薄になる」と話し、発達障害への正しい理解を求める。

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