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「もの忘れ外来」開設 榊原白鳳病院 笠間睦さん

医人伝

(2011年4月12日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

患者の尊厳守りたい 診療情報部長 笠間睦さん(52)

画像「認知症は早期発見が重要」と話す笠間睦(かさま・あつし)さん=津市の榊原白鳳病院で

 緑に囲まれた病院の「もの忘れ外来」。笠間睦さんの問診で年齢を問われた男性は「うーん、64歳ぐらいですかね」と困った顔で言葉を預けた。

 あくまで柔和な表情の笠間さん。間を置いて、「80歳になられましたね」と、かんで聞かせるように話すと、「そうそう、昭和5年生まれだからね」と男性は頭をかいた。忘れていても否定せず、優しく応じる。認知症患者には、こんな態度が必要だという。

 男性に付き添っていた妻は「本人の前では言いにくいんだけど」と前置きし、朝は仕事に行くと言って聞かないこと、夜は興奮して首を絞めようとすることなどを説明した。黙って聞いていた男性は「そうだったかな」と首をひねった。

 認知症患者の家族は、徘徊(はいかい)や暴言、暴力でくたくたになっていることが多い。対処法をアドバイスしたり、症状を詳しく聞いてあげたりすることで、ストレス解消になるという。

 母が開業医、父が医学系研究者だったことに影響を受け、高校生のときから医師を目指した。脳神経外科医になり、大学病院で約10年間、多忙な毎日を過ごした。

 ある時、ふと気づいた。「専門知識に凝り固まり、一般的な医療のことをあまりにも知らない」と。

 医師としての幅広さを求めて、津生協病院(津市)で脳ドックの担当内科医に。その頃、認知症の客観的な診断指標が複数発表され、早期診断を行う全国初の専門ドックを開設した。

 認知症治療薬がない時代。院内に「薬がないのに早期診断しても意味がない」という意見もあったが、開設後は早期診断を求めるお年寄りが列をなした。

 いま、笠間さんが積極的に使う診断法が「リバーミード行動記憶検査」。複数の顔写真を覚えたり、耳で聞いた長文を間違いがないように再現したりする比較的難しいテストだ。同病院では、もの忘れ検診受診者全員に受けてもらうという。

 もの忘れ外来は、今や全国にできた。時代の変化を感じるものの、認知症への社会の偏見は、今もあると感じる。昨年、父親が亡くなる直前、認知症状が出ていた。「父の尊厳やプライドをどうやったら守れるか」。認知症学会専門医ながら、自問自答したという。

 今年、新たな治療薬が承認される見込みで、治療の幅が広がる。「早期発見すれば、発症や進行を遅らせることができるし、治療可能な認知症を見逃さないためにも早期受診が必要です」(市川真)
榊原白鳳病院(津市)

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