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長野ダルク10年 運営難航 入寮者多くが生活保護

(2011年5月22日) 【中日新聞】【朝刊】【長野】 この記事を印刷する

県「支援を否定はしない」

画像薬物依存者が共同生活を送る長野ダルク=上田市蒼久保で

 薬物依存者が社会復帰に向け共同生活を送る、長野県内唯一の民間リハビリ施設「長野ダルク」(上田市)の運営が難航を続けている。利用する依存者の多くが生活保護を受け、規定の料金が払えないという事情が背後に横たわる。依存者の社会復帰や啓発の拠点、相談窓口として薬物対策の最前線に立ち続け10年。県は「財政面での支援を否定はしない」と話している。 (白名正和)

 「開設して10年、黒字だったことは1度もないよ」。自身も薬物の経験がある、長野ダルク代表の竹内剛さん(49)が打ち明ける。

 長野ダルクは2001年4月に東部町(現東御市)で始まった。同年12月、上田市の住宅街に建つ築50年ほどの木造2階建て住宅に移転。今年4月までの10年で延べ200人以上がダルクの門をくぐった。現在は依存者8人が竹内さんらスタッフ3人と暮らす。

 運営は入寮者が月ごとに払う「入寮時生活費」が柱だ。寮に入る月に20万円、以後は月17万円(11〜4月の冬季は1万円増)で全国の水準と同じ。光熱費や食費、入寮者の生活費やセミナーのための移動費などを賄う。

 現在の入寮者8人のうち7人が生活保護を受給する。「全国でも生活保護の入寮者は多く、全体の7割近くになるのでは。入寮者の多くが刑務所や病院を出たばかりだからね」

 生活保護の場合、費用は10万8千円に減らすが「それを払えないことだってある。でも拒まない。薬物依存者にとって相談に来た時が、方向性が決まる最も大切な瞬間だから」。費用を施設が1〜2カ月、肩代わりすることも少なからずある。

 ホームページなどで募る1口1万円の支援会員は10年で90人。「入寮者の家族が入れてくれることが多く、継続的なケースは少ない。今年に入ってから新規はゼロ」。民間の製薬会社からの支援を受けるが苦しく、本来は竹内さんの給料となる刑務所や学校での講演の1年の委託費など計約200万円も、運営費に充てている。

 「(行政は)直接的な支援は無理であっても、松本や岡谷辺りに場所を提供してくれたらありがたいんだが」。竹内さんは難しい表情で話した。

 県警によると、県内で2010年に検挙された覚せい剤事案は53件、41人。前年に比べ30件、22人の減だが「検挙にまで至らないケースもある」と説明し、薬物事件は依然、深刻だと受け止めている。

 薬物依存対策として県は09年度から、国の3カ年の「地域依存症対策推進モデル事業」に取り組む。長野ダルクも事業を進める会議のメンバーとして参加し、発行された依存者向けのハンドブックに入寮者の実体験が紹介されている。

 小林良清県健康長寿課長は「ダルクには事業のメンバーとしてお世話になった」。施設への支援について「ダルクや医療機関などを財政的にサポートできるコンセンサスが会議で得られれば、否定するものではない」と説明した。

 ダルク(DARC) 薬物(drug)依存症(addiction)リハビリテーション(rehabilitation)センター(center)の英単語の頭文字を取り、1985年に東京で初めて設立された。現在は全国に60ほどあるとされ、入寮者は依存の程度に応じ短くて1年ほどの期間、共同生活を送る。入寮などの問い合わせは長野ダルク=電0268(36)1525=へ。

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