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終末期を考える 末期がん 在宅医療の現場 緩和ケアで普通の生活

(2011年7月26日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

気になる医療費 かさむのは一時期

画像鈴木香美さん(左)からアロマテラピーのマッサージを受けながら、看護師の木村久美子さんも交えて談笑する近藤須磨子さん(手前)=岐阜市内で

 末期がんで病院の医師に「もう治療法がない」と言われたとき、住み慣れた自宅で充実した日々を過ごしたいと願う人は少なくない。だが、在宅医や訪問看護師の在宅緩和ケアを受けられるのか、痛みを感じずに過ごせるのか、在宅医療費は高いのでは−など心配事は尽きない。在宅でのみとりに力を注ぐ岐阜市の小笠原内科の取り組みを通して、在宅医療の実情を見た。(市川真)

 「こうしてもらうとむくみが取れて、気持ちがいいんですよ」。岐阜市内に住む末期がん患者の近藤須磨子さん(64)は、アロマテラピーボランティアの鈴木香美さんからマッサージを受け、目を細めた。

 胸に医療用麻薬のパッチを張り付けて痛みをコントロールしており、近所のスーパーに歩いて買い物に出たり、料理洗濯をしたりと全部自分でできる。

 ミシンで孫のスカートを作るのが楽しみなこと、書店で料理の本を買って新しい料理に挑戦していることなどを、鈴木さんと訪問看護師の木村久美子さんに一気に話し、「こうして人と話してるのが1番の薬やわ」と笑った。

 がんが判明したのは昨年6月。背中とみぞおちに痛みを感じて岐阜県内の総合病院を受診し、末期のすい臓がんと診断された。痛みがあって寝られない日々。病院は「治療法は、もうない」と言うばかりで、痛みを取る治療はなかったという。昨年末には「余命2カ月」と言われ、小笠原内科に駆け込んだ。

 日本在宅ホスピス協会長を務める同内科の小笠原文雄医師は、1989年の開業時から積極的に在宅でのみとりを行い、これまで500人をみとった。医療界では、ほぼ不可能と思われていた独居も十数人。独居の認知症患者など、より困難な患者のみとりにも取り組んでいる。

 近藤さんは現在、小笠原医師の訪問診療と訪問看護を週1回ずつ受けている。パッチは、近藤さん自身が毎日交換。「普通の生活ができる。痛みを感じないので、交換し忘れてしまうこともあるんです」と話す。

患者負担の実例

 医療費の自己負担分は現在、月額約4万5千円、薬代が約2万5千円の計7万円。夫と年金生活に入っているが、60代のため医療保険の自己負担は3割。「医療費がどのくらいかかるか心配だったが、意外に安く感じた」と話す。

 症状が進めば、訪問診療や訪問看護の回数を増やし、介護保険を使うつもりだ。その際は、薬代を含む医療費が約16万4千円、介護費が2万3千円など計19万2千円と想定。この額だと、収入によって負担限度額のある高額療養費制度が適用されるため、実質の自己負担は計約11万2千円となる見込みだ。

 小笠原医師は「末期がん患者が自宅でケアを受けて暮らすと、入院中よりも元気になり、亡くなる直前まで普段の生活が送れることが多い。医療費や介護費の自己負担額が多くなる期間は比較的短い」と話す。

 ただ、夜間の往診は交通費が患者負担となることから、容体変化に家族が不安になって、何度も医師や看護師を呼ぶと負担額は増してしまう。

 「亡くなる直前に患者はどのような状態になるのか、家族に事前に知ってもらったり、日ごろの心のこもったケアで急な往診が不必要になるぐらい安心してもらうことが、末期がん患者の在宅医療には大切」と小笠原医師は強調。朝までしっかり寝られる薬の服用なども勧める。

高額療養費制度で入院より負担軽く

 在宅医療の自己負担額は、所得やケアの程度により異なる。主なものは、医師の訪問診療代や点滴代、薬代、訪問看護ステーションの訪問看護代、ベッド代、ヘルパー代、エンゼルケア代など。

 入院でも在宅でも、高額な医療費がかかった場合、個人で支払うのは難しいため、自己負担の上限が設けられている(高額療養費制度)。

 自己負担の上限額は年齢や所得水準によって異なるが、70歳未満の人が1年以内に3カ月間限度額まで払うと、4カ月目から減額される。70歳以上の場合の上限額は、入院に比べ在宅は低く設定されており、負担は入院よりはるかに少なくて済む。

 上限を超えた金額の返還は、窓口支払いの約3カ月後となるため、一時的にまとまったお金を用意する必要がある。加入している公的医療保険に入院前に申請し、限度額適用認定証を受けると、窓口支払いは上限額までで済む。医療費支払いが難しい場合には、無利息の貸付制度を利用できる場合がある。

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