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新生児、周産期、救急 模擬装置で“現場”体験 名市大病院の研修施設

(2011年12月13日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

医師、看護師ら リアルに対応学ぶ

画像最新の新生児シミュレーターを使い、助産師から蘇生法を教わる受講生ら=いずれも名古屋市瑞穂区の名古屋市立大病院で

 産科や新生児科のスタッフが慢性的に不足する中、経験の少ない若い医師や看護師、助産師らに基礎的なトレーニングを積んでもらおうと、名古屋市立大病院(同市瑞穂区)が今年開設した「臨床シミュレーションセンター」が好評を得ている。高機能の模擬人形を用いて実践に近い形で訓練し、スタッフの自信やチーム医療の推進につなげようとの狙いだ。(加藤美喜)

 「マスクは赤ちゃんのあごから外さないで。目にもかかっちゃダメです」。12月上旬、若手看護師を対象にした新生児蘇生法(NCPR)の講習会。講師役のベテラン助産師が、新生児の人工呼吸に用いるマスクの注意点を説明した。

 呼吸マスクが目にかかると眼損傷を起こし、あごから外れると空気が漏れる。サイズ選びは重要だ。新生児には、医療器具も治療法も大人とは異なるものが求められる。センターには、カテーテルや聴診器、気管挿管時に使う喉頭鏡など、新生児サイズの器具がずらりと並ぶ。

 「このタイプの喉頭鏡は電球が緩みやすいので、使う前にしっかり確認すること。気管の中に落ちたら重大な事故になる」「挿管時には、医師が欲しい場所にすぐにチューブを渡せるように。緊急時は医師との連携プレーが大事です」。講師が強調すると、受講生らは熱心にノートを取っていた。

 臨床センターの売りは最新式の高性能シミュレーター(模擬人形)だ。一基二百数十万円の米国製新生児シミュレーターは6基。機嫌や呼吸などの状況に応じて違う泣き声を発したり、呼吸困難などで皮膚や粘膜が青紫色になるチアノーゼを起こしたりする。

 人形の顔が青ざめると「すごーい」とどよめきが起きた。気管の形状や色、肺の動きなども実物さながら。新生児集中治療室(NICU)で使う保育器とセットで設置されており、実際の蘇生現場に似た状況が再現できる。

 NCPR講習を受講した看護師(24)は「人形の動きが非常にリアルで驚いた。人工呼吸では酸素がマスクから漏れてしまい、調節が難しかった。実際の現場では瞬時の判断がいろいろ求められると分かり、勉強になった」と話した。

他施設スタッフも受け入れ

画像「マミータミー」を着けて、赤ちゃんの胎動や体温などを疑似体験する男性受講者

 センターは、愛知県の地域医療再生計画に基づき3月に開設。国が都道府県に配分した地域医療再生基金から約2億円を充てた。広さは約400平方メートルで、利用者は県内全域(一部県外も)の医療従事者が対象。妊婦のシミュレーターもあり、新生児分野だけでなく、周産期、救急の研修に対応している。設備の充実度に加え、他施設のスタッフを受け入れるシミュレーション施設は全国唯一という。

 変わった講習会としては、非妊婦を対象にした「妊婦体験」も。11月下旬には、神奈川工科大の小坂崇之助教が開発した最新の妊婦シミュレーター「マミータミー」が、周産期医療研修の一環として東海地方で初めて紹介された。

 「マミータミー」は、たくさんの風船やセンサー、バイブレーターなどが装備されており、羊水と同じ温度の水を注入して腹部を膨らませる。胎児の体温や成長過程、おなかを蹴る感触まで体験でき、特に男性に妊婦の大変さを知ってもらおうと開発したという。

 体験講座には、育児休業明けの助産師や、研修医以降に産科を学ぶ機会の少なかった医師らが参加。他病院に勤務する男性整形外科医(42)は「重いジャケットを身に着ける妊婦体験はしたことがあるが、おなかが徐々に膨れたり、実際にポコポコと蹴られる感覚は初めて。妻の大変さが分かった」と話した。

 各種研修を統括する笹野寛センター長は「昔は実地で体験しながら覚えたが、ここ10年での医学シミュレーション教育の発展は著しいものがある」と指摘。背景には、各地で相次いだ医療事故を受けて、医療安全対策への意識が高まったことがあるという。

 「臨床ではなかなか経験できないような状況を多職種のチームでシミュレーターで訓練することで、自分の役割や相手の立場が把握でき、チーム医療の推進につながる」と話す。

 センターは今後、外部の研修プログラムの受け入れや、他の大学病院・中核病院と連携した研修も積極的に企画する予定で、地域医療の底上げを目指したい考えだ。

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