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原因不明の「混合型血管奇形」 難病指定へ100万人署名

(2011年12月27日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

血管など増殖 赤い腫れやあざ 患者家族ら 理解求め手記も出版

画像母親の佐藤朋子さん(左)も執筆した手記を見る萌々花さん=岐阜市で

 原因不明で、治療法が確立されていない「混合型血管奇形」。国の難病指定を求めて患者や家族が活動を続け、これまでに約104万人の署名を集めて厚生労働省に提出した。11月に手記も出版し、病気への理解や研究を呼び掛けている。(境田未緒)

 小学4年生の佐藤萌々花(ももか)さん(10)=岐阜市=は、合唱や折り紙が好きな元気な女の子。ただ、生まれつき腹部に大きな赤い腫瘍があり、生後間もなくから手術を繰り返してきた。体育の授業も制限されている。

 萌々花さんが生まれ、母親の朋子さん(35)が最初に聞いた病名は「リンパ管腫・血管腫」だった。腫瘍切除などの手術を受け、投薬も続けたが効果はない。患部が細菌に感染して高熱を出し、命が危ぶまれる事態に陥ったこともある。

 病院を訪ね歩き、「混合型血管奇形」と告げられたのは3歳の時だった。英名を直訳しただけで、日本での病名は確立されていない。血管やリンパ管の形成がうまくいかず、増殖して複雑に絡み合い、腫れやあざが現れる。患部に衝撃を与えると大量出血につながる。

 発症部位や痛みなどの症状はさまざま。治療はエタノールなどを注入して血液の流れを抑える「硬化療法」やレーザー照射などの対症療法しかない。専門医が非常に少なく、病気を知らない医師も多いため、意味のない治療を受けることも。

 朋子さんは、飯尾良英・中部学院大短大部教授らと2007年、「混合型血管奇形の難病指定を求める会」を設立。運動は全国に広がり、88人が患者家族会に入っている。

 萌々花さんは年3回、専門医がいる札幌市の病院で硬化療法を受け、1回の入院は2週間ほど。成長するにつれ「これからは、メンタルケアも必要になっていくのでは」と朋子さんは話す。

画像母親の岩川智恵さんに甘える雅治君=山形県上山市で

 山形県上山市の岩川智恵さん(36)は、生後8カ月だった次男の雅治君(7つ)=小学1年=を連れたスーパーで突然、見知らぬ老夫婦に浴びせられた言葉を忘れない。「ひどい母親。子どもの顔にやけどをさせるのは、100パーセント母親の責任よ」

 雅治君は毛細血管の異常な増殖で、顔の右側に赤いあざがある。虐待を疑われたり、通りすがりの女子高生に「きもくねー」と言われたり。「いじめられないよう、幼稚園に行く前に何とかしたい」とレーザー治療を繰り返した。生後9日から形成外科、小児科、眼科、歯科などを受診。緑内障や頭痛の症状があり、現在は県内外の4つの医療機関に通院する。

 「健康に産んであげられなかった」と、精神的に追い詰められた智恵さんだが、救われたのは、1番つらいはずの雅治君がいつも明るいこと。その姿を見るうち、「家にこもらず外に出してあげなきゃ」と思うようになった。雅治君は最近、顔を見詰められると、自分から「生まれつき〜」と言うすべを覚えた。

 「求める会」などを通して知り合った患者家族の支えも大きい。悩みを語り合ううち「子どもが自立した生活を送れるような社会や福祉にしなくては」と思うようになった。

 患者5人と家族14人の手記「泣いてばかりいられない」(1500円、みらい)には、足の奇形に苦しんだり、病名が分からないまま悩み続けたりした思いがつづられている。佐藤さんは「病気の存在と、どんな病気でも『生きたい!』と願う人がいることを知ってほしい」と話している。本の問い合わせは、みらい=電058(247)1227。

 国の難病対策 原因不明で症例数が少なく、治療方法が未確立の上、生活面への長期にわたる支障がある疾患について、研究の推進や福祉施策が行われている。「難治性疾患克服研究事業」では、130疾患を対象に原因や治療方法が研究され、うち56の特定疾患では医療費の自己負担が軽減されている。

 2009年度から研究奨励分野が設けられ、これまで体系的な研究がされず、診断基準すらない214疾患(10年度)を対象に、実態把握を目的とした研究が行われている。混合型血管奇形も「難治性血管腫・血管奇形」として採択されており、3年を一区切りに研究成果をまとめる。来年度の調査研究は未定。厚生労働省の難病対策委員会は、難病対策全体の審議も進めている。

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