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精神科の敷居下げる 八事クリニック 半田 容子さん

医人伝

(2012年1月10日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

人生を深める手助け 院長 半田 容子さん(58)

画像手書きのカルテを前に話す半田容子(はんだ・ひろこ)さん=名古屋市の八事クリニックで

 アロマオイルの香りが漂う診察室。観葉植物と花が飾られ、白いレースのカーテンが、日の光を柔らかく遮る。「患者さんも私も、気持ちが楽になるようにしています」

 1994年、「うつ病などの治療を軽症のうちに」と開業。勤務していた精神科病院で、入院患者の女性が「友達は、こういう病気だと思わずに自殺した」と話した。早く受診していれば、命を絶たずに済んだかもしれない。だが精神科病院に行きづらい人は多い。敷居の低いクリニックが必要、と考えた。

 中学校まで、親が言うとおり「女子大を出て見合い結婚」と思っていた。ところが高校紛争真っただ中の進学校で、フランスの女性作家ボーボワールに心酔。「自立だ!」と、名古屋大医学部に進んだ。

 精神科の病気は、その人の性格や成育環境などで背景が違い、同じパターンはない。問診で「なぜ無理をしたのか」などと考えていく。女性の場合、以前は産後うつが多かったが、最近は介護うつや発達障害児の母親のうつが増えてきた。経済的な問題が背景にある場合も。言葉で働きかける精神療法や投薬で治療する。

 12年前、一人娘が米国の高校に留学して、自身が無気力な「空の巣症候群」の状態に陥った。異常に気付き、「精神分析学会の認定医になろう」と勉強を開始。研究に興味が湧き、50歳で大学院に入った。診療や論文で忙しさがピークになったころ突然、髪の毛が抜け始めた。全頭脱毛で半年間、カツラの生活。「ストレスは、さまざまな形でサインが出る。『これ以上頑張ったら駄目』のサイン」だった。

 こうした経験で、心の健康の問題に関心を持ち、産業医を引き受けるように。ある会社では、診療所の看護師が「頭痛を訴えているけどメンタルでは」と連れてきた社員が、軽いそううつ病だった。

 働く気力を無くした若い社員が復職する際、会社と相談して職場を変えたところ、いい上司と先輩に恵まれ、見違えるように元気になった例も。「医療と職場の連携が大事。社員・管理職教育も通して早期発見、治療につなげたい」

 以前、「うつになって良かった」と話す女性患者がいた。「これまでの生き方に無理があることが分かった。生きるのが楽になった」と。病気はつらいが、プラスになることもある。「人格が成長したり、人生が深くなったり。それに付き合っていけるのも、精神科の醍醐味(だいごみ)だと思います」 (境田未緒)
 八事クリニック(名古屋市昭和区)

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