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山間地の医療を担う あたご診療所 上野山庄一さん

医人伝

(2012年2月7日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

地域に溶け込み診療 院長 上野山庄一さん(46)

画像「地域のために尽くしたい」と話す上野山庄一(うえのやま・しょういち)さん=浜松市天竜区のあたご診療所で

 「一人前でない医師を喜んで受け入れてくれた。こちらも力いっぱい期待に応えたいと思いましたね。幅広い診療をする、時間外診療をする、往診もする。その時に決めた診療方針は、今も変わりありません」

 2003年4月、長年にわたり無医地区だった当時の静岡県天竜市(現浜松市天竜区)上阿多古(かみあたご)地区に着任した。地区の人口は約1500人。28年ぶりのお医者さんは、住民らの温かい歓迎を受けた。

 公設民営方式で新しい診療所が建てられ、妻と小学2年、幼稚園年長、2歳の3人の子を伴って診療所近くの医師住宅に移り住んだ。今では地区の一員として溶け込み、高齢化が進む山間地の地域医療を担う。

 静岡市出身。小学5年のころ、野口英世の伝記を読んで感動した。「大きくなったら困っている人を助ける人になりたいと思いましたね」。自治医大に入り、辺地医療を志した。専門は消化器外科・内科。上阿多古地区と同じ山間地の佐久間病院(天竜区佐久間町)に4年間勤務し、総合医として経験を積む。

 上阿多古地区は、03年以降も高齢化が進み、一人暮らしのお年寄りが増えた。「病気だけを診るのではなく、患者の生活環境を知ることが大事。安心感を持って任せてもらえるよう努めています」

 交通弱者のためにと、6年ほど前からは「かえるサービス」を始めた。診療所の責任の下、地域住民が高齢患者の希望に応じ、家のそばまで車で送る仕組みだ。現在は、25人の住民が登録して、運転を担当している。

 「赴任当時からコミュニティーの中に入りたいと思っていました」。その思いは地域に飛び込む姿勢に表れている。祭りなど地域のイベントに積極的に参加。区内の駅伝大会には、毎年地区チームのメンバーとして出場する。「8年前からマラソンを始めました。自分が走る姿を見て住民に健康への意識を高めてもらいたい」と思いを話す。「こう見えても、フルマラソンを2回走っています」。ちょっと立派な体格を揺らしながら笑う。

 地区住民を対象に年に1回、計3会場で開く健康講演会も続けている。ユーモアを交えながら骨粗しょう症や生活習慣病、認知症などを分かりやすく解説する内容は、好評を得ている。

 赴任から9年。「1人の住民としてこの地域に関わりたい気持ちが強まりました。地域の子どもが大きくなって診療所を継いでくれるのが夢です」(間渕文隆)
 あたご診療所(浜松市天竜区)

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