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小児がん治療、質高く 研究グループを集約 臨床試験を全国統一

(2012年2月21日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

合併症対応など長期支援も

画像外来治療の患者に治療の説明をする堀部敬三医師=名古屋市中区の名古屋医療センターで

 治療の進歩が著しいといっても、小児がんは子どもの病死原因の1位。年間2千〜2500人が発症し、血液がんが4割強を占める。その中で最も多い急性リンパ性白血病の全国統一臨床試験が、今春から始まる。

 試験に取り組むNPO法人「日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)」理事長で、名古屋医療センター臨床研究センター長の堀部敬三さんは、「今までは海外の治療を遅れて取り入れてきた。これで同じスタートラインに立てる」と意義を話す。

 例えば、ある薬を治療で2ミリグラム使ってきたとする。病状によって1ミリグラムでいい場合、3ミリグラム必要な場合があることが分かってきたが、効果的な使用法や使用量を決めるには、統一した方法での臨床試験が必要になる。だが、拠点病院での小児がん治療が進む欧米と違い、日本は一施設の症例数が少なく、大規模な臨床試験が難しかった。

 「質の高い臨床試験で、根拠に基づく治療法を確立しよう」と2003年、全国で4つあった研究グループを統合してJPLSGが誕生。患者の少ない疾患から順次、統一臨床試験を実施してきた。国際共同の試験にも取り組む。

 JPLSGには、全国の小児血液がん症例の9割をカバーする144施設が参加。急性リンパ性白血病でも統一臨床試験が始まることで、ほぼ全ての小児血液がんで、同じレベルの治療が行われることになる。

 試験への参加を決めるのは患者や家族で、これまで対象者の8〜9割が参加。堀部さんは「臨床試験では、今考えられるベストの治療をしつつ、より良い治療の確立を目指す。『治ればいい』ではなく、治療の質を上げる時代」と語る。

 小児がんを克服した人は、国内に5万人以上いるとみられる。治療終了後、遅れて出てくる「晩期合併症」や就労の問題、出産への影響などが近年、注目されるようになった。

 晩期合併症には、低身長やホルモン不足、心機能障害などがある。ごく軽い症状を含め、約半数の人に何らかの合併症があるという。JPLSG長期フォローアップ委員会の委員長で、聖路加国際病院(東京)小児科医長の石田也寸志さんは「進学や就職で地元を離れ、その後の定期検査などが途絶える人が多い」と指摘する。

 治療内容などにより、合併症のリスクが高い場合、低い場合がある。だが、どんな治療を受けたか知らないまま、予期せぬ合併症に苦しむ人もいる。その時になって治療内容を調べようと思っても、主治医が定年退職していたり、すでにカルテがなかったりする。

 同委員会は、治療後にどんな支援が必要か、医療者が判断するガイドラインを作成中。リスクに応じて検査などを受けていれば、症状が出る前に対応し、日常生活への影響を防げる場合もある。治療内容と受診記録を患者自身が保管、活用できる「フォローアップ健康手帳」も試作している。

 名古屋医療センターや聖路加国際病院のように、小児がん経験者らを対象にしたフォローアップ外来のある医療機関も。石田さんは「長期フォローアップは、患者が自分の健康を守るためにも必要。さらに現在の治療が10年後、20年後にどう影響するか検証でき、将来のより良い治療にもつながる」と話す。

 かつて治療が困難だったが、近年「治る病気」になってきた小児がん。特に白血病やリンパ腫などの小児血液がんは、研究グループの集約化で、全国で同じレベルの治療が受けられるように。治療後の人生が長くなったため、遅く出てくる合併症の早期発見や社会的サポートなど、小児がん経験者を支援する取り組みも進んでいる。 (境田未緒)

 小児がんと対策 2012年度からの次期「がん対策推進基本計画」の素案には、分野別施策の中に新たに「小児がん」が設けられた。国会で審議中の新年度予算案にも、小児がん対策の推進費として新たに、拠点病院の整備費など4億円が盛り込まれた。

画像フォローアップ手帳の試作版(右)とガイドブック

 小児がん治療後に発生する問題点や対応策について、疾患別、臓器・機能別に解説したガイドブック「よくわかる 小児がん経験者のために〜より良い生活の質(QOL)を求めて〜」(3990円、医薬ジャーナル社)が発行されている。石田さんも編者に加わった。

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