〈3・11から 1年を経て〉 消えた入院ベッド
被災地、医療過疎に拍車

岩手県山田町には県立山田病院と4つの民間医院があったが、津波で大半が浸水した。山田病院はプレハブの仮設で再開したが外来診療のみとなった。町内から入院用のベッドがなくなってしまった。
震災前から、十分な医療体制が整っていない「医療過疎」の状態だった。3年前から山田病院に内科はなく、常勤医師は外科と整形外科の2人だけ。再建も危ぶまれる。だが町民は「救急受け入れと入院機能は元のように確保してほしい」と懇願する。
重症患者は、30キロ以上離れた同県の宮古市や釜石市で診てもらうしかない。山田町の仮設住宅に住む飯岡弘子さん(74)の夫は、避難所にいた時に肺気腫が悪化。宮古市内の病院に入院した。
はじめのうちは、夫の元に通うためバス停まで20分歩いてから1時間バスに揺られ、さらに約10分歩いていた。「バスはお金もゆるくねえ(厳しい)し、乗っているのもゆるくねえ」
今は町内の福祉団体が始めた高齢者向けの無料送迎サービスを使う。ようやく仮設から病院まで直行でき、約40分で行けるようになった。
だが比較的医療基盤がしっかりしている宮古市でも医師不足は顕著だ。県立宮古病院では一昨年、循環器科医として大阪から招かれた「ニセ医師」が逮捕される事件すら起きた。

岩手の人口10万人当たりの医師数(2010年)は、181.4人で全国で下から5番目でしかない。
医師不足の原因は、およそ4半世紀の間、国の方針で医師の数を抑え続けたことにある。04年度、臨床研修先を自由に選べる制度が導入されると、研修医が都市部にとどまるようになった。地方の医師不足に拍車がかかった。
06年、政府は医師数を増やす方向に転じた。医学部定員は07年度の7625人から、11年度には8923人に増えている。
だが山田町で送迎サービスをする福祉団体の理事長、佐藤照彦さんは「定員が増えても、一人前の医師に育つまでに10〜15年かかる。それまでに(地域の)医療は崩壊する」といらだちを隠さない。
佐藤さんは「医師になった後、数年間の地方勤務を義務化してほしい」と訴える。
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