患者の痛みに向き合う 名古屋麻酔科クリニック 鳥居 圭さん
医人伝
「楽になった」聞くため 院長 鳥居 圭さん(39)
患者に痛む場所を聞きながら、局所麻酔を打つ鳥居圭(とりい・けい)さん=名古屋市名東区で「最近は寒くなって、ちょっとつらいかもね。またすぐ良くなるから大丈夫」。股関節や腰の痛みを訴える名古屋市内の女性(65)宅を訪れ、笑顔で診察を始めた。
2007年4月、痛みの軽減を専門とするクリニックとして開院。足や腰の痛みを抱える高齢者は通院が難しく、往診にもっとも力を入れている。
女性は、10代のころに股関節の手術を受けて以降、さまざまな痛みを50年も我慢してきた。背骨は曲がり、うまく歩けない。「とにかく痛みを取ってほしい」。インターネットでクリニックを知り、初めて麻酔科を受診した。
「足と腰と、首も痛いんです」。痛い場所や痛みの強さを聞きながら、その日の治療内容を決める。痛みを緩和するため、弱い局所麻酔を注射で少しずつ打つ。
愛知県安城市出身。外科医を目指し名古屋大医学部に進んだ。研修医時代、痛みに苦しむ患者の延命治療に疑問を感じた。「死ぬのは怖くない。痛みだけは我慢できない」。がん患者の言葉が今も忘れられない。研修2年目、苦しみを減らすことができる麻酔科医になることを決めた。
8年間、麻酔科医として大学病院などで勤務。大きな病院では、患者を診るより病気を診ているようだった。患者の不安な気持ちに寄り添いながら問題を一緒に解決するため、開業した。
患者の7割は、足や腰に痛みを抱える整形外科関連。必要があれば磁気共鳴画像装置(MRI)などで痛みの原因が何なのか、慎重に調べていく。局所麻酔を使った神経ブロックや医療用麻薬、内服薬など、症状に合わせて処方する。
原因がわからず病院を渡り歩き、痛みを取り除く「最後のとりで」と受診する患者も多い。「痛みが続くと気持ちも落ち込む。ストレスや不安が大きいと痛みも大きくなる。精神面との関わりが非常に大きい」。欧米では、痛みと心のケアの研究が進み、医療の現場にも取り入れられているが、日本ではまだ認知度が低い。
麻酔科医の往診は珍しい。一人暮らしの高齢者とじっくり話し、自宅のリラックスできる環境で治療することが、実は痛みの緩和に効果があると最近、感じている。
“痛みの専門家”は、「楽になった」と患者の表情が明るくなるのが一番うれしい。「生き生きと暮らすために頼ってほしい。痛みを減らし、幸せになってほしい」 (柚木まり)
名古屋麻酔科クリニック(名古屋市千種区)
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