つなごう医療 中日メディカルサイト

患者の痛みに向き合う 名古屋麻酔科クリニック 鳥居 圭さん

医人伝

(2012年3月20日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

「楽になった」聞くため 院長 鳥居 圭さん(39)

画像患者に痛む場所を聞きながら、局所麻酔を打つ鳥居圭(とりい・けい)さん=名古屋市名東区で

 「最近は寒くなって、ちょっとつらいかもね。またすぐ良くなるから大丈夫」。股関節や腰の痛みを訴える名古屋市内の女性(65)宅を訪れ、笑顔で診察を始めた。

 2007年4月、痛みの軽減を専門とするクリニックとして開院。足や腰の痛みを抱える高齢者は通院が難しく、往診にもっとも力を入れている。

 女性は、10代のころに股関節の手術を受けて以降、さまざまな痛みを50年も我慢してきた。背骨は曲がり、うまく歩けない。「とにかく痛みを取ってほしい」。インターネットでクリニックを知り、初めて麻酔科を受診した。

 「足と腰と、首も痛いんです」。痛い場所や痛みの強さを聞きながら、その日の治療内容を決める。痛みを緩和するため、弱い局所麻酔を注射で少しずつ打つ。

 愛知県安城市出身。外科医を目指し名古屋大医学部に進んだ。研修医時代、痛みに苦しむ患者の延命治療に疑問を感じた。「死ぬのは怖くない。痛みだけは我慢できない」。がん患者の言葉が今も忘れられない。研修2年目、苦しみを減らすことができる麻酔科医になることを決めた。

 8年間、麻酔科医として大学病院などで勤務。大きな病院では、患者を診るより病気を診ているようだった。患者の不安な気持ちに寄り添いながら問題を一緒に解決するため、開業した。

 患者の7割は、足や腰に痛みを抱える整形外科関連。必要があれば磁気共鳴画像装置(MRI)などで痛みの原因が何なのか、慎重に調べていく。局所麻酔を使った神経ブロックや医療用麻薬、内服薬など、症状に合わせて処方する。

 原因がわからず病院を渡り歩き、痛みを取り除く「最後のとりで」と受診する患者も多い。「痛みが続くと気持ちも落ち込む。ストレスや不安が大きいと痛みも大きくなる。精神面との関わりが非常に大きい」。欧米では、痛みと心のケアの研究が進み、医療の現場にも取り入れられているが、日本ではまだ認知度が低い。

 麻酔科医の往診は珍しい。一人暮らしの高齢者とじっくり話し、自宅のリラックスできる環境で治療することが、実は痛みの緩和に効果があると最近、感じている。

 “痛みの専門家”は、「楽になった」と患者の表情が明るくなるのが一番うれしい。「生き生きと暮らすために頼ってほしい。痛みを減らし、幸せになってほしい」 (柚木まり)

 名古屋麻酔科クリニック(名古屋市千種区)

同じ連載記事
思い通わせ終末医療 国立長寿医療研究センター 三浦久幸さん (2013年5月21日)
研究の魅力を伝えたい 三重大大学院医学系研究科 江藤みちるさん (2013年5月14日)
認知症患者と家族支える 福井県済生会病院 里裕一さん (2013年4月30日)
障害者に寄り添い治療 おおやま歯科医院 大山吉徳さん (2013年4月23日)
子育てを幅広く支援 矢嶋小児科小児循環器クリニック 矢嶋茂裕さん (2013年4月16日)
同じジャンルの最新ニュース
腎提供で6人重大合併症 生体移植の内視鏡手術 (2013年5月24日)
金沢医科大 副腎手術で膵臓を切除 (2013年5月24日)
四日市市、失語症患者の支援開始 (2013年5月23日)
お元気ですか 〈1253〉 COPD (2013年5月22日)
しゃれたリハビリ タンゴ療法に情熱 (2013年5月22日)

中日新聞グループの総合案内サイト Chunichi.NAVI

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人