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小児から成人へ 移行期のがん患者 「AYA世代」に継続的な医療を

(2012年4月3日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

思春期 心のケア手薄 治療法にもばらつき  克服後も合併症のリスク

画像長期フォローアップ外来で、小児がん体験者の大学生に近況を聞く堀浩樹さん=津市の三重大病院小児科で

 「AYA世代」と呼ばれる15歳から29歳にかけての思春期・若者のがんに、積極的な取り組みを求める声が高まっている。小児がんと成人がんの境界にあり、実情の把握が進んでいないうえ、進学、就職、結婚などに関する心理面の支援も必要になることが多い。東海地方のがん体験者と医療者双方の声を聞いた。(編集委員・安藤明夫)

 岐阜県の病院でソーシャルワーカーを務める広田圭さん(29)は、大学2年の20歳のとき、健診のエックス線検査で異常が見つかり、病院で精巣がんと診断された。既に肺、腹部リンパ節に転移していたが、5度の手術と4クールの抗がん剤治療で乗り越えた。

 入退院を繰り返した1年間の闘病で最もつらかった体験は「髪の毛が抜けて痩せ細っていく中で、そのつらさをほとんど誰にも言えなかった。唯一言えた友人も『自分には重すぎる』と去っていった。どん底の気持ちでした」。

 苦境を乗り越えられたのは、家で待つ愛犬を含めた家族の存在。休学を経て大学を卒業。「この経験を役立てたい」と専門学校に通って社会福祉士の資格を取り、医療の世界に入った。2007年には、同世代のがん経験者とグループを結成し、がん患者交流イベント「リレー・フォー・ライフ」に毎年参加している。

 就職後に恋人ができた。思い切って闘病体験を打ち明けると、受け入れてくれて、昨年結婚した。治療の影響で生殖能力に不安があるが、必要なら不妊治療も考えていくという。

 入院生活を振り返って治療面の不満はないが「医療職に話せない悩みもあるので、同世代の患者同士で支え合うピアサポートが大事です。そして自分以上に大変だったのは、きっと母親。若年性がんに関しては、本人だけでなく、親を含めた『キーパーソン』への心のケアができる態勢が必要です」と話す。

 広田さんのように大人の入り口で発症した患者や、小児期に発症して思春期を迎える患者について、欧米では「AYA世代」と呼び、大人とも子どもとも異なる独立した世代として扱う考え方が定着してきた。

 三重大小児科で小児がんの子どもたちを長く診ている堀浩樹さん(医学医療教育学分野教授)は、日本の現状について「小児科は15歳まで診て、それ以上は大人の内科という不文律のようなものがあって、思春期の難しい時期に治療が分断されてしまう」と遅れを指摘する。

 堀さんが問題視するのは、次の4点。

 <1>急性リンパ性白血病では、子どもに対しては強い薬物治療が行われるため治療成績が良いが、15歳以上だと成人と同じ治療が行われ、効果が不十分になることがある。

 <2>思春期・若年成人に多い骨肉腫などは、小児科、整形外科の双方で扱うため、共同研究が難しく、治療方法にも施設によるばらつきが出ることがある。

 <3>小児がんを克服した後、大人になってから出てくる晩期合併症があるが、経過観察のための受診を思春期以降に中断してしまう例が多い。

 <4>思春期の心の声を聞いてあげられる立場の医療者が少ない。専任の臨床心理士やソーシャルワーカーは配置されておらず、小児科医や看護師が、その責任を果たそうと努めている。

 特に<3>の晩期合併症に対しては、放射線治療の影響で2次がんを発症したり、運動制限などが原因で肥満、生活習慣病の問題が起きるなど、さまざまなリスクに備えなければならない。

 三重大では1998年から、小児がん経験者を対象にした「長期フォローアップ外来」を開設しており、国内の先駆的な立場。健康に問題がなければ年1回の受診で、合併症に関する検査をしたり、近況を聞いたりする。「婚約者に病気のことをどうやって説明するか」といった相談も珍しくはない。だが、15歳から20歳の時期に受診しなくなる子も、全体の30%近くいる。

 「これも思春期の難しさの表れだと思う。私たちが長期フォローアップの大切さを十分に伝え切れていないことも反省する必要がある。小児科と内科が重なり合って支えていける形が理想」と堀さん。

 小児がんの患者は、以前は20歳まで医療費控除を受けられたが、現在は「治療終了後5年まで」。早期の受診中断がさらに進むことを堀さんは恐れる。

 長期フォローアップ外来を設ける病院は少しずつ増えてきたが、病院ごとに基準が異なるため、厚生労働省の班会議などで指針づくりを進めている。

 AYA世代 「Adolescent and Young Adult」の略。小児がんと成人がんの境界領域の世代を指す。

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