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薬物依存問題に心砕く 養南病院  杉田憲夫さん 

医人伝

(2012年4月10日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

訪問診療にも力入れる 院長 杉田憲夫さん(64)

画像「入院患者とじっくり話す時間を大事にする」と杉田憲夫(すぎた・のりお)さん

 「30年以上、精神科医をやってきて、自分の心も相手の心も分かりません」ときっぱり。だから、「心」が分かっているような顔をして、「薬を飲め」と言うことに抵抗があるという。

 患者に薬を処方する際は「経験上、この薬を使うと症状が和らぎ、楽になるかもしれない」と説明する。使ってみて効かない場合、薬を重ねるのではなく、別の薬に替える。いくつも薬を重ねると、症状が治まっても、どの薬が効いたか分からない−という事態が起きうるからだ。

 新人医師のころ、市販薬を乱用して、意識障害を起こしたり、自傷行為に至った人を続けて診て、薬物依存の問題に関心を持った。処方薬で薬物依存に苦しむ人も。「薬を使うことに、医師はもう少し謙虚になった方がいい」と考えるようになった。

 愛知県出身。進路に迷っていた高校3年の時、父親から「おまえのおじいさんは、医者になりたくて果たせず、俺が親になる前から『子どもは1人は医者にしろ』と言われていた」と医学部を薦められた。それまで全く医学部向けの受験勉強をしておらず、進路指導の教師からは「バカか」と言われた。3浪して岐阜大医学部に合格。まだ母校にいたその教師は、祝いに駆け付けてくれた。

 浪人中、くじけそうになると図書館に行き、ブッダの言葉が書かれた本を繰り返し読んだ。その本の影響か「自分はどんな人間なのか。自分の心を知りたい」と精神科を選んだ。「分かるなんて、幻想でしたが」と笑う。

 岐阜大病院などを経て1989年、養南病院に。2001年から院長を務める。精神科患者への偏見は強い。年に2回、院内でイベントを開き、地域の人に遊びに来てもらう。外来・入院患者も一緒に盆踊りや出店を楽しむと、子どもたちも「(患者は)普通のおじさんだ」と分かる。

 6月から、養南病院を経営する社会医療法人が大垣市に開設する診療所の管理者になる。1人で外来もこなすが、病院に来られない人の訪問診療に力を入れる予定。「今までは、自分の土俵で診察していたが、相手の陣地に出掛けていって話を聞いていただく。薬はもっと使わなくなるのでは」(境田未緒)
 養南病院(岐阜県海津市)

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