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支え合う 患者たちの絆〈14〉 岐阜睦声会高山教室

(2012年4月15日) 【中日新聞】【朝刊】【岐阜】 この記事を印刷する

取り戻した声自信生む

画像発声練習に励む会員たち=高山市天満町の高山赤十字病院で

 家に電話がかかってくると、鳴りやむまで布団をかぶせていた。「どうせ出ても話せんから」。声を失い、自信も失っていた。それでも「食道発声」を続けて2年。「あ」と音が出た。さらに2年後、会話ができるようになった。携帯電話を買った。うれしかった。

 岐阜睦声会高山教室の代表世話人を務める有巣皓蔵さん(77)は1992年、喉頭がんによる喉頭摘出の手術を東京女子医大で受け、担当教授の勧めで食道発声に取り組む東京の団体に入って7年間、高山から通った。その後、高山教室ができ、5人ほどの当初メンバーの1人として参加した。

 手術に伴い、気管に食べ物が入り込むのを防ぐため食道と気管を分離し、首に空いた2センチほどの気管孔で呼吸。食道を使って空気を吸い込み、げっぷをする要領で音を作って会話する。

 「以前は人前に出るのも嫌で、常に自分が身体障害者だと感じていたが、今はあまり感じない。仲間がいるとお互いに『どうにかしよう』という気になる」と語る。

 高山教室は会員も増え、現在は飛騨地域の約15人が入っている。その立ち上げに尽力した岐阜睦声会の会長野倉武彦さん(70)は「集まりが名古屋や岐阜市であると飛騨の人が通うのは地理的に難しい。陸の孤島のようだった」と振り返る。

 県内で声帯切除をした人は200人以上いると考えられているが、睦声会のような団体に参加しているのは100人ほどにとどまる。「喉頭がんは第一線を退いた高齢者に多い。食事はできるので『話せなくてもいいや』という人もいる」と野倉さん。参加したくても家から遠いことや人前に出るのを嫌がる人が多いのも一因にあるという。

 高山赤十字病院の一室で13日にあった高山教室。集まった会員たちは自分で音を聞き取るためマイクを使って食道発声の練習をしたり、筆談を交えて会話を楽しんだり。美濃加茂市から足を運ぶ女性(56)は「ちょっと心配なことも相談できたり悩みを分かってもらえる」と、こうした場の良さを説明してくれた。女性が入りやすいようにと岐阜睦声会の「食道発声指導員」も務めているという。

 野倉さんは「仲間をつくって会話をしてほしい。会話をすることで自信になる」と力を込める。 (大沢悠)

 喉頭がん 声帯の表面などにできる悪性腫瘍。声門がん、声門上がん、声門下がんに分けられる。声がれや食べ物を飲み込むときに痛みを感じる症状が出る。60〜70代に目立ち、男性に圧倒的に多く、女性に比べて7〜10倍。喉頭の全摘出手術をした場合、正常な発声機能が失われる。発声法として「食道発声」「シャント法発声」「電気喉頭」がある。

 岐阜睦声(ぼくせい)会高山教室 NPO日本喉摘者団体連合会岐阜睦声会(岐阜市)の高山教室として2006年、高山市で発足。岐阜睦声会は1985年にでき、県内の活動拠点はこの2カ所。高山教室は現在約15人(岐阜睦声会は約75人)が所属。毎月第2、第4金曜に高山市天満町の高山赤十字病院に集まり、食道発声の練習や情報交換などをしている。問い合わせは、有巣皓蔵さん=電0577(32)2810。

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