コラム「紙つぶて」 「白い巨塔」の今 杉浦真弓(名古屋市立大産科婦人科教授)
教授に関連病院の人事権なし
医学部の権力闘争や教授を頂点とした大学、関連病院、開業医のヒエラルキーを描いた「白い巨塔」は、山崎豊子さんの小説、故田宮二郎さんのドラマとも熱中しました。
実は平均年収はその逆で、大学は高い社会的地位によって均衡を保ってきました。かつて教授の権力は絶大で、私も教授命令に従って遠方の病院に赴任しましたが、今、私が命じても、地方勤務は敬遠されます。法律的なことを言えば、教授に関連病院の人事権はありません。
ハイリスク分娩(ぶんべん)が集まる大学や公的病院は、医療事故のリスクも高く、勤務医の社会的地位も低下している感があり、診療所に医師が移動するのは資本主義社会の自然の摂理です。現に中堅医師の引き抜きによって分娩が困難になった公的病院もあります。教員の人事異動のような仕組みが医師の世界には存在しないので、医師の地域偏在は歯止めが利きません。「白い巨塔」には、世の中の役に立つこともあったのです。
日本は国内総生産に占める医療費比率が先進国の中で低く、医療レベルは高いことが知られています。産科でいえば妊婦死亡率、新生児死亡率の低さは世界トップレベル。これは、勤務医が労働基準法に守られることなく働いてきたためです。が、法令を順守すれば、今の医療レベルを保つことは困難です。どうしたものか。山崎先生、「白い巨塔」の現代版を書いていただけないでしょうか?
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