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開腹せず膵・胆がん診断 超音波内視鏡で組織を採取

(2012年4月17日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

新治療への応用も

画像超音波内視鏡下穿刺術で患者の膵臓の病変から細胞を採取する医師ら=名古屋市千種区の愛知県がんセンター中央病院で

 膵臓(すいぞう)や胆道などにできるがんの診断で、患者に大きな負担をかけずに、がんが疑われる組織を採取する「超音波内視鏡下穿刺(せんし)術」が威力を発揮し、注目を集めている。開腹手術をせず、早期にがんか否かの診断ができる。新しい治療への応用も期待されており、国内でいち早く取り入れた愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)が、技能普及の拠点となっている。(林勝)

 愛知県がんセンター中央病院の内視鏡室。医師たちが、モニターの画像に映った丸い影に見入る。患者の口から胃に挿入された超音波内視鏡が、胃壁の向こうにある膵臓を映し、浮かび上がらせた病変だ。

 内視鏡の先端を胃壁に押し当てて位置を決め、ワイヤのような穿刺針を内視鏡のチューブに差し入れる。先端から病変まで2〜3センチ。太い血管がないのを確認し、一気に針を突き刺す。針が直径1センチほどの「影」を刺す様子が、モニターに映し出された。

 針を刺したのは、病変の細胞を採取するため。糸くずのような細胞の塊を、細胞検査士が手早く染色処理して顕微鏡で観察する。「細胞の量は十分。(悪性の可能性がある)異形の細胞は今のところは見られません」。後日、遺伝子なども詳しく調べる。検査は静脈注射をして行うので苦痛はなく、20〜30分で終了、翌日退院となった。

 消化器内科部長の山雄(やまお)健次さんは「組織の採取が難しかった臓器の病変を採り、直接調べられることに大きな意味がある」と強調する。

 胃や大腸のがんを疑われた患者は、内視鏡で直接、病変組織を採り、細胞を調べて診断を確定させるのが一般的。だが膵臓や胆管周辺にできた病変は、内視鏡を直接、入れられないため採取が難しい。コンピューター断層撮影(CT)などの間接的な情報で診るため、がんか否かの確定診断ができない場合が多く、開腹手術をして、「がんではない」と分かる例も少なくない。

 愛知県内の男性(75)は8年前、県内の総合病院で「進行した膵臓がん」と診断され、主治医から余命宣告を受けた。他の医師の意見を求めるため、県がんセンター中央病院を受診。山雄さんに超音波内視鏡で病変組織を採ってもらい、検査したら、自己免疫性膵炎(すいえん)だった。薬物療法で症状は改善。男性は「手術でおなかを開くのを覚悟していたので、医療の進歩を再認識した」と語る。

 山雄さんが超音波内視鏡下穿刺術に取り組み始めたのは1994年。日本人医師が発案した技術だが、国内では広まらず、欧米で評価されて急速に普及していた。

 当時は保険適用がなく、病院が検査費用を持ち出し。「(がん細胞が別の場所に散らばる)播種(はしゅ)が起きたり、合併症が伴うリスクを冒してまでやる必要はない」と反対する外科医も多かった。実際にはがんの播種はまれで、合併症発生率は従来の内視鏡検査とあまり変わらない。県がんセンター中央病院は、97年からこれまで2600人に実施。がんか否か確定する診断率は95%に達する。2010年に保険適用となり、これを機に導入する病院が全国で一気に増えた。ただ山雄さんは「普及はしたが、もっと技術レベルを上げていく必要がある」と指摘する。

超音波内視鏡による穿刺術の仕組み

 中央病院には、研修のために国内だけでなく、世界各国から医師が訪れる。高知大医学部から研修に来た医師の長谷川俊之さん(33)は「超音波内視鏡の技術を学べる医療機関はまだ限られている。ここが最も進んだ施設であり、しっかり学んで技術を地元に持って帰りたい」と話す。

 超音波内視鏡下穿刺術は、がん組織に薬剤を直接注入したり、症状を改善させたりする治療への応用も進む。山雄さんは「医師の技能を高めれば、患者の負担を大きく減らせることができる」と指導に励んでいる。

 超音波内視鏡下穿刺術 超音波で組織内部の画像を見ながら、検査や治療のために穿刺針を駆使する医療技術。通常の内視鏡では胃壁や腸壁などの表面にある病変を見るだけだが、超音波で内部の病変も見ることができ、膵臓や胆道などへのアプローチがしやすくなった。超音波を発する部分を病変に数センチまで近づけるため、体外からの断層撮影より詳しい画像が得られる。

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