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理想の終末医療追求 藤井医院 藤井康広さん

医人伝

(2012年4月17日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

在宅医療に可能性感じ 院長 藤井康広さん(57)

画像医院で通院患者を診療する藤井康広(ふじい・やすひろ)さん=福井県坂井市の藤井医院で

 町家風の外観に、日本庭園が見える待合室。検査、処置室も兼ねた診察室には絵画が飾られ、明るい雰囲気を演出する。

 「ここに来るとほっとする、と言う方もいます。治療には患者さんの自然治癒力も大きいんですよ」。医院のほか、6つの高齢者施設を運営し、終末期医療にも力を入れる。

 東京慈恵医科大を卒業後、外科医として都内の病院に勤務。故郷の福井県三国町(現坂井市)に戻り、町立三国病院に8年間勤めた。当時は一般的ではなかった在宅医療を手掛けたのは、1993年に父の医院を継いで間もなくだった。「患者さんに『死ぬ時は家がいい』と相談されて。まだ診ている患者も少なく、時間に余裕がありましたから」

 大腸がんの手術を拒否した80代の女性がいた。自宅治療を望んだため、呼吸を助ける酸素機器や点滴の使い方を家族に指導。往診し、容体が変化すると昼夜なく駆けつけた。夫が懸命に世話をし、女性は住み慣れた家で穏やかに息を引き取った。「予想以上に本人や家族の雰囲気が良かった。病院のベッドで亡くなることが普通、と思っていた既成概念が崩れた」

 在宅医療に可能性を感じ、それから数年間は取りつかれたように働いた。「とにかく忙しかった。1カ月で4人の末期がん患者をみとったこともありました」と振り返る。

 開業医1人での24時間対応。疲労は増し、限界を感じた。もともと父から受け継いだ複数の高齢者施設を運営していたこともあり、「自宅に近い施設環境での終末期医療」に活路を見いだした。

 99年、末期がん患者にも対応した介護老人保健施設「東尋坊ひまわりの丘」を開所。常勤の医師や信頼のおける医療スタッフを配置し、運営の傍ら診察もしている。

 「職員は毎日お年寄りと接し、肉親のような愛情を感じるようになる。亡くなると心から涙を流すんです。その姿に私も感動します」。施設では現在、年間30人の最期をみとる。

 残り少ない人生を、本人が望むように安らかに過ごせる「病院と自宅の間のような場所づくり」を目指す。現在の医療活動の原点には、“理想の死のかたち”を知った在宅医療での経験が生きている。(古谷祥子)
 藤井医院(福井県坂井市)

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