春に起きやすいストレス性便秘 生活改善で解消を
長引けば全身に不調 下剤多用、逆効果も 便意感じる能力が低下

職場の異動で緊張が続くなど、ストレスによる便秘が起きやすい時季。軽ければ生活習慣の改善で治せるが、放置したり下剤に頼り過ぎたりすると、悪化する恐れもある。便秘の原因や解消法などを専門家に聞いた。(竹上順子)
転勤や昇格など環境の変化が多い春は、自律神経のバランスが崩れ、便秘になりやすくなる。順天堂大医学部教授で、付属順天堂医院で便秘外来を担当する小林弘幸さんは「普段はお年寄りの患者さんが多いが、この時季は30代を中心に、若い人の受診が増える。特に女性が多い」と話す。
便通で大きな役割を果たすのが、大腸が収縮して便を運ぶ「ぜん動運動」。自律神経のうち、体をリラックスさせる副交感神経が優位になると、腸の働きやぜん動運動が活発になるが、ストレスなどで自律神経の働きが乱れると、腸機能が悪化しやすくなる。
「便が出ないと老廃物が排出されず、さまざまな不調が引き起こされる」と、便秘外来がある松生(まついけ)クリニック(東京都立川市)院長の松生恒夫さんは指摘する。血流や代謝の悪化、冷えなどが起きるという。
「便秘による悪玉菌の増殖も問題」と小林さん。腸内細菌のうち悪玉菌が増えると、ガスがたまっておなかが張ったり、腹痛が起きたりするほか、肌荒れや体臭、肥満なども引き起こす。悪玉菌は偏った食事やストレスでも増え、悪循環になりやすいという。
また松生さんは「腸内環境の悪化は、免疫力低下にもつながる」と指摘する。病原菌などを排除するリンパ球が、小腸や大腸に多く存在するためで「病気にかかりやすくなる恐れもある」と話す。
便秘には日数などの明確な定義はないが、松生さんは「一般的には、便通が週1回程度だったり、薬がないと排便できなかったりする場合は便秘と考えられる」。軽い便秘は食生活の改善などで治せるが「放っておいたり、安易に下剤を使ったりすると重症化する」と警告する。
松生さんが問題視するのが「便意」を感じなくなること。大腸の最後の部分に当たる直腸に便が到達すると、脳に信号が送られて便意が起き、排便につながるが、重症患者の多くが便意を感じなくなっているという。
その主な原因が、下剤の多用。下剤の中にはセンナ、大黄(だいおう)など腸を直接刺激して排便を促すものがあるが「このタイプの下剤を長く使っていると、腸の動きや、便意をキャッチする能力が低下する」と松生さん。そのため、さらに下剤に頼る例が多いという。
小林さんは「排便の我慢も便意の“センサー”が利かなくなる原因」と指摘。最近はほかに、ダイエットが目的の食事制限や下剤使用による便秘も増加。糖尿病などの病気や、抗うつ薬が原因の場合もあるという。

治療には、便を軟らかくする下剤なども使うが「目標は腸の機能回復」と松生さん。患者には、運動や食生活の改善などを指導するが、重症の場合、回復には1〜2年はかかるという。便秘を悪化させる要因=表=を挙げ「軽いうちに自分で治すことが大切」と力を込める。
小林さんも「1カ月近く便通がない患者さんも多く、腸内環境が良くなるまで半年、回復まで1年はかかる」。乳酸菌摂取にヨーグルトを勧める。焦るとストレスで悪化するため、じっくり取り組みたい。「おなかの調子がおかしいと思うことがワンシーズン続くようだったら受診を」と話している。
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