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〈終末期を考える〉 “自宅で看取る”どう支援

(2012年4月24日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

医療、介護関係者ら 専門職の連携強化を 「患者の望む最期」実現へ

画像在宅での看取りをどう支援していくか、熱心に意見を出し合う医療、福祉、介護の関係者ら=滋賀県日野町で

 自宅で最期を迎えたいという本人と家族への支援をどう充実させていくか。滋賀県東部の東近江地域で、医療と福祉、介護の専門職が連携し、在宅医療や看取(みと)りの態勢を築く取り組みが進んでいる。ポイントは互いに顔の見える信頼関係づくり。事例を持ち寄って対応を議論しながら、専門職間の壁をなくし、看取られる人や家族の思いに応えていく。そんな好循環が生まれている。(林勝)

 「患者さんの何か食べたいという訴えに応えたかった。でも、『お医者さんが駄目と言っているから、ごめんね』というしかなくて…」

 東近江地域の医療、保健、福祉、介護関係者らが自主的につくった医療連携ネットワーク「三方よし研究会」が、3月15日に同県日野町で開いた会合。「わがまちの在宅看取り事情」をテーマに、約100人が地区別に分かれて意見交換した際、女性ケアマネジャーが体験を語った。

 このケアマネジャーが担当した男性患者は末期がんで在宅療養を希望。ただ、病院の担当医が食べ物を誤って飲み込む危険性が高いとして食事を禁じ、胃ろうで栄養補給をしていた。患者は「食べたい」と意思を示していたが、その思いはかなわなかった。

 「食べることが患者さんにとって大きな幸福感につながる」。そばで思っていたケアマネジャーは、食べさせることに伴うリスクを介護現場では負えないという悩みを率直に話した。

 この話を受け、医師や看護師、作業療法士、歯科衛生士らが積極的に意見を述べた。「退院後、患者の身体能力が変化することがある。その対応が必要ではないか」「看護師や言語聴覚士、栄養士らの専門職が患者の状態を把握し、主治医に再評価を促すこともできる」。議論は「今後、患者が最期まで食べられるように、チームで応援していく」ことでまとまった。

 「専門職でも個々で解決できることは限られる。患者と家族のために互いの垣根を越えて話し合えたことが本当に良かった」。議論の輪にいた社会福祉士で、ケアプランセンターを運営する楠神(くすがみ)渉さん(39)は振り返る。

 別のグループでは、どうすれば在宅で看取りができるか議論。「どういう状態になると死に近づいているのか分からない」「容体の変化で家族に不安が募ると、看取りの支援が大変になる」などの課題が出た。

 訪問看護に従事し、数多くの看取りに立ち会ってきた西田享子さん(53)は「医療や介護の専門職でも、家で亡くなるのをイメージできない人が多い」と感じた。不安になる家族を皆で支えるため、医師や訪問看護師への連絡・相談態勢をつくる大切さを訴えた。

 研究会の中心的なメンバーで、東近江市永源寺診療所の花戸貴司医師(41)は「高齢になると病気を治すのが難しくなる。それであきらめるのではなく、患者さんが普段の生活から元気を得られるように支えることが大切になる」と指摘する。

 しかし、実際には「食事をさせて、もし事故が起こったらどうしよう」「病院に運ばず、後で責任を問われないか」などと考え、結果的に本人の希望に応えられないことがあるという。

 最期まで患者の生活を支えるため、花戸さんは「地域住民と医療、福祉、介護関係者の顔の見える信頼関係づくり」を強調。これまでの研究会の活動で培った専門職の連携で、患者の体調に応じた食事や入浴、トイレ、リハビリなどきめ細かく支援。在宅療養に伴う家族の負担が減り、本人の要望に沿って終末期を迎えられる事例が増えている。

 花戸さんは「専門職の方には、本人のために良いことは何かを家族を含めて多職種で共有し、前向きに実践してほしい」と話している。

三方よし研究会(東近江地域医療連携ネットワーク研究会)

 滋賀県の東近江医療圏で、病院での医療から在宅療養、看取りまで切れ目なく支援する態勢づくりに向け、関係者の連携強化を進めている。

 脳卒中患者のケアやリハビリを支える地域医療を充実させるため、2007年に医師らが結成。勉強会や事例報告会を盛り込んだ集会を月1回開き、毎回100人超が参加。がんや難病の患者の支援も議論されるようになった。活動を学ぼうと、県内外の医療、行政関係者の参加も増えている。

 近江商人の理念「売り手よし、買い手よし、世間よし」にちなみ、「患者よし、機関よし、地域よし」を目指して三方よし研究会と命名された。東近江保健所に事務局がある。

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