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〈この人〉 民俗学者で介護職員 六車由実さん

(2012年4月29日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

准教授から介護の世界へ

画像六車由実さん

 ポケットにメモ帳を忍ばせ高齢者の食事や入浴の世話をする。静岡県内の介護施設で働きながら入所者の人生を聞き取った「驚きの介護民俗学」(医学書院)が話題を呼んでいる。実は4年前まで私大の准教授だった正真正銘の民俗学者だ。

 要介護者は「まさに忘れられた日本人」だと言う。高度成長期、電線を引くため山村を泊まり歩いた電気技師や、蚕の雌雄を見分ける技で製糸業を支えた「蚕の鑑別嬢」ら貴重な近代史の生き証人ばかりだ。

 新興住宅地のサラリーマン家庭で育った。「地域に根っこがないから伝統社会が不思議だった」と民俗学の道へ。人身御供(ひとみごくう=いけにえ、犠牲)の研究でサントリー学芸賞を33歳で受賞し、時の人となった。だが大学の現状に疑問を感じて4年前に退職。聞き取りで出会った村の老人たちの顔が浮かび「間接的でも役立ちたい」と介護の世界に飛びこんだ。

 聞き書きの大半は認知症患者だが、若いころの記憶は鮮明。聞き取るうち、徘徊(はいかい)などの症状にも時に理由があることを学んだ。「民俗学に関心がある人は介護現場の魅力を、介護職の人は民俗学の面白さを知ってほしい」。同県沼津市在住、41歳。 (谷岡聖史)

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