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「大丈夫」を伝えたい いせ在宅医療クリニック 遠藤太久郎さん

医人伝

(2012年7月31日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

ハイテク技術より精神的支え 院長 遠藤太久郎さん(62)

画像認知症で寝たきりの女性を診察する遠藤太久郎(えんどう・たくろう)さん

 寝たきりで認知症のノブさん(92)は、眠っている時間がめっきり増えた。

 目を覚ましたのを見計らって、娘さんが年齢を尋ねると、小さな声で「ひゃく」。娘さんは「さっきは80って言ってたのに…」と吹き出した。

 在宅ホスピスケア−住み慣れた自宅で、病気を問わず、最期まで暮らせるように支えることが、遠藤太久郎さんの願いだ。午前中は内科・心療内科の外来。午後は各家庭を回り、時間をかけて患者や家族と接する。「必要なのは、ハイテクの医療技術よりも、精神的な支え。うそをつかず、『そのやり方で大丈夫』という思いを伝えています」

 枕元に携帯電話を置き、夜中のコールにアドバイスする。約50人の在宅患者のうち、進行がんの人は、常時5人前後。痛みの管理には点滴よりも貼り薬や水薬を使う。その方が患者や家族が対処しやすいからだ。

 近鉄宮町駅近くの廃業した自転車屋さんの店舗部分を借りて、10年前に開業した。一昨年には、母屋部分も借り、多目的スペース「縁(えにし)の家」を設けた。がん患者のおしゃべりサロン、家族を見送った人のグリーフ(悲嘆)ケア、生と死を考える勉強会などに使っている。「医師ではなく、一遺族としての思い」がこもった場だ。

 22歳のとき、父をがんで亡くした。名古屋大法学部の卒業直前だった。一般企業に就職したものの、父の死に「割り切れない理不尽な思い」をずっと引きずっていた。それが「医療の裏側を見たい」という気持ちにつながり、25歳で三重大医学部に入った。

 内科の勤務医時代は、患者の立場と程遠い医療に疑問を抱き、うつ病を何度か患った。三重県こころの医療センターに勤めた時は、アルコール依存症の患者や精神疾患の家族と接し、心のケアの大切さを痛感した。在宅ホスピスへの思いが強まり、先輩医師を訪ねたり、海外研修に出掛けたりした。信頼していた同僚看護師が末期がんになり、在宅でのみとりに関わった経験も、開業の後押しとなった。

 「その看護師さんが亡くなった時は、父と同じ52歳でした。私の開業も52歳。不思議な巡り合わせを感じます」(編集委員・安藤明夫)
いせ在宅医療クリニック(三重県伊勢市)

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