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排尿障害 進む薬剤治療 名古屋大後藤教授に聞く

(2012年8月21日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

再生医療も取り組み

画像「排尿障害は生活の質を左右する病気」と話す後藤百万さん=名古屋市の名大医学部で

 夜間の頻尿、尿失禁などの悩みを抱える人は多い。薬剤などによる治療は進歩しており、我慢せずに泌尿器科を受診したい。名古屋市で28日から「第19回日本排尿機能学会」が開かれるのを前に、学会長を務める名古屋大大学院教授の後藤百万(ももかず)さんに、排尿障害の現状や課題を聞いた。(編集委員・安藤明夫)

 −排尿障害は、どれぐらいの方が抱えているのですか。
 排尿機能学会が2002年に実施した疫学調査では、夜間頻尿が推計2500万人、昼間の頻尿も1千万人など、65歳以上で区切ると78%の方が何らかの排尿の問題を持っていることが分かりました。

 −学会での注目分野は。
 基礎でも臨床でも、前立腺肥大症、過活動膀胱(ぼうこう)、夜間頻尿が大きなトピックです。新しい薬剤が次々に出てきたことが背景にあります。例えば、過活動膀胱の薬は今まで膀胱の収縮を抑える作用がメーンで、尿が出にくくなるという問題がありましたが、去年出た薬は膀胱の力は弱めない。夜間頻尿の分野では、利尿ホルモンの日内リズムがおかしくなって、夜間の尿量が増えるタイプもあるのですが、これに対して、昼間の尿量を増やす薬も開発中です。進歩は目覚ましいです。

 −これからの研究の方向性は。
 再生医療が大きなテーマです。膀胱や尿道の括約筋などをどう再生するか。名大でも、厚生労働省の許可を得て、臨床応用に少しずつ取り組んでいます。

 もう1つは「血流」をめぐる研究。動脈硬化になると、膀胱に行く血流が悪くなるなど、排尿障害と血流の関係がいろいろ指摘されるようになりました。QOL(生活の質)との関係もさまざまな研究があります。排尿障害は命に関わらないけれど、夜間に何度も起きたりすると、翌日の仕事に差し障るし、気分が落ち込んだりと、生活上の影響が大きい。

 −介護の分野でも、排尿障害は問題になっていますね。
 私たちの調査では、愛知県で在宅介護を受けている人の6割がおむつをしている。1割は尿道カテーテルが入れっ放し。でも、その3、4割はおむつもカテーテルも不要なんです。排尿の状態をきちんと評価し、寝かせきりを防いでいく作業を、誰がどう進めていくか。去年、名古屋で開いた日本老年泌尿器科学会で取り上げましたが、これから日本泌尿器科学会全体で考えていきたい問題です。

 −排尿の悩みを持つ人たちへアドバイスを。
 それぞれの病気によって、薬剤だけでなく、外科治療、理学療法など、いろいろな治療があります。泌尿器科はかかりにくいかと思いますが、きちんと診断を受けると治療できることが多いです。

男女とも多い頻尿 内科との連携必要な例も

中高年男性に多い前立腺肥大症

 排尿障害のうち、男女ともに多いのは頻尿。加齢による腎臓の働きの低下、心臓疾患や睡眠時無呼吸症の影響などさまざまな原因があり、泌尿器科と内科の連携が必要になるケースも多い。少量の尿がたまっただけで尿意を覚える過活動膀胱も、頻尿や女性の切迫性尿失禁につながる。

 中高年男性に多い前立腺肥大症は、精液をつくる前立腺が加齢によって肥大し、尿道が圧迫されて尿が出にくくなる病気。薬で改善しない場合は、外科手術の対象になる。

女性に多い尿失禁

 女性の尿失禁のうち、腹圧性尿失禁は、せきやくしゃみなどの際に漏れてしまう状態から、だんだん進行して階段の上り下りなどでも漏れるようになる。膀胱や子宮、直腸などを支える骨盤底が、妊娠・出産や加齢によって緩み、尿道が開きやすくなることが大きな原因。薬物、排尿トレーニング、手術などの治療法がある。

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