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支え合う みえの患者団体〈7〉 桑名失語症渡しの会

(2012年9月30日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する

リハビリ作業場設置へ

画像一般の人に知ってもらうためのセミナーも企画している=桑名市で(桑名失語症渡しの会提供)

 「桑名失語症渡しの会」の会長林淳蔵さん(67)=桑名市=が失語症を発症したのは16年前。職場で一仕事終え、ソファに座っているうちに脳出血で倒れた。翌日、病院のベッドの上で目覚め、字が読めない自分に気が付いた。

 失語症の症状やその度合いは100人いれば100通りあるといわれる。悩みもさまざまだ。「思うように言葉が出てこない」と言う田中勇さん(77)=朝日町=は、電車の切符を買おうとして言葉が駅員に伝わらなかった経験がある。地理は分かっていても、1人での行動に自信がないという。

 脳内の細胞が損傷しているため、言葉だけでなく体のほかの部分に障害がある人も少なくない。このような患者を支える活動をしたいと、林さんは言語聴覚士らの協力を得て2007年に会を発足させた。外出が難しい患者たちとナゴヤドームへ野球観戦に行ったことも。昨年は失語症を広く知ってもらおうとセミナーを開いた。

 失語症に専門医はなく、治療薬もない。脳神経外科や内科など担当医の指示の下、言語聴覚士によるリハビリが中心となる。県言語聴覚士会会長で会に関わる佐藤裕紀さん(38)は「完全に元に戻る人はまれだが、回復が何年にもわたって起こると言われている。そのために長期的なリハビリは有効だ」と話す。

 林さんは発症から1年半後に仕事に復帰した。リハビリを始めたころは1分間に動物の名前がいくつ言えるかというテストで1つも言えなかったが、今は当時が想像できないほど回復した。「仕事に復帰して手足を動かし、しゃべったことが“特効薬”ではないか」と自己分析する。この経験から、会として会員のための作業場を桑名市内に作ろうと動きだしている。

 言語聴覚士との1対1の言語訓練は限られた空間でのコミュニケーションになりがちだ。佐藤さんは「病院と家でしか話さない患者にとって、会の活動は患者の世界を広げ、リハビリにもつながる」と期待している。 (渡辺聖子)

 失語症 脳出血や脳梗塞などの病気や事故により、脳内の言語に関わる細胞が損傷すると発症する。「話せない」「聞いて理解できない」「読めない」「書けない」の4つの障害が現れ、その度合いは人により異なる。多くの人は左脳に言語機能を担う分野があり、損傷を受けることで右半身にまひなどの症状を伴う場合もある。

 桑名失語症渡しの会 2007年9月発足。現在の会員は桑名市や朝日町などから患者とその家族、言語聴覚士など約30人。毎月第4日曜に桑名市常盤町の桑名市総合福祉会館で定例会を開き、音楽や講演を楽しんだり、家族が悩みを相談し合ったりしている。10月28日午前10時半から市総合福祉会館で、一般市民も対象の「第2回失語症を考えるセミナー」を開く予定。連絡先は、会長の林淳蔵さん=電090(6099)1017

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