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セシウム濃度隠さない ハンバーグ、基準値以下でも表示

(2012年10月14日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

岩手の畜産加工業者 食の安全訴え続け

画像穴田光宏さんが製造したハンバーグには放射性セシウムの混入量が表示されている=盛岡市の「ちいさな野菜畑」で

 「放射性セシウム11ベクレル/キログラムです」。岩手県岩泉町の畜産加工業穴田光宏さん(40)は、販売するハンバーグの放射性物質濃度が国の基準値を下回っていても、あえてラベルに表示する。東京電力福島第1原発事故による食物汚染が長期化し、基準値以下の食品が流通する中で一石を投じる取り組みだが、追随する動きはほとんどない。(谷悠己、写真も)

 セシウム濃度は厚生労働省が定めた一般食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を大きく下回り、明示する義務はない。「でも、健康への影響が100パーセントないとは言い切れない。たとえ微量でも、あるものを『ない』とは言えない」と穴田さんは説明する。

 穴田さんが代表を務める店「モーとんふぁみりー」は、人工飼料を使わない家畜を材料に無添加のハンバーグやソーセージ作りにこだわってきた。

岩泉町

 原発事故後に全国に拡大したえさの稲わら汚染の影響はなかったが、昨年9月に地元産の肉牛に微量のセシウム汚染が発覚。福島第1原発から270キロ離れていても牧草がわずかに汚染されたためとされ、基準値を超える濃度はなかった。

 穴田さんはこれをどう売るか悩んだ末に、あえて汚染濃度を表示して販売することを決断。常連客には地元畜産家の支援の意味もあると説明した上で、今年1月から発売した。これまで、基準値以下の汚染牛5頭を購入している。

 冷凍ハンバーグに加工し、2個入り(360グラム)で760円。これまで扱ったのは1キロ当たりセシウム11ベクレルと6ベクレルの肉。通信販売の常連客が共感して買ってくれるようになったが、売れ行きは良くない。

 販売を委託してきた小売店はいずれも「他の製品も表示しなければならなくなるので」と取り扱いを拒否。畜産業者からは「余計なことをして」と責められた。

 唯一、販売を承諾してくれたのは盛岡市の小売店「ちいさな野菜畑」。代表の小島(おじま)進さん(61)は「有機野菜を扱ってきた身としてやるべきことはこれだと思った」と趣旨に賛同した。

 触発された小島さんは10月から、ハンバーグ以外の野菜などの商品についても、店に備えている放射線測定器を使い、セシウム濃度を表示し始めた。

 食品の基準値は4月に厳しくされた際に、甘いと批判する声もあり、特に給食食材などについて汚染濃度の公表を求める親の運動などが起きている。

 小島さんと穴田さんは「消費者には正しく放射線量を理解した上で、よく考えて食材を買ってほしい。そのために濃度を表示し続ける」と声をそろえた。

 消費者庁によると、こうした事例は全国でも珍しい。担当者は「100ベクレルという基準値は消費者の健康だけでなく、生産活動にも配慮して決めている。消費者の選択肢を広げる点では評価できるが、積極的に推奨するのは難しい」と静観の構えだ。

 食品と放射性物質 原発事故直後に設けられた暫定規制値は野菜や穀類、肉と魚が1キロ当たり500ベクレルで飲料水が200ベクレルだったが、今年4月に厳しくされて一般食品は100ベクレル、乳幼児食品は50ベクレル、飲料水は10ベクレルになった。1キロ当たり100ベクレルの食品を1年間食べ続けたとしても、一般公衆の年間線量限度の1ミリシーベルトを下回る。

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