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支え合う みえの患者団体〈9〉 がん患者支援「和みの会」

(2012年10月28日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する

悩み共有 看護師身近に

 御浜町の紀南病院に勤務する看護師田中由美子さん(48)は、がん患者と接するうちに、看護師に対し遠慮して話したいことが話せない人がいるのに気づいた。

 医療を施す側と受ける側の間に、見えない壁があると思ったのが、同僚と2009年にがん患者を支援する「和みの会」を立ち上げたきっかけだ。3カ月に1回、餅つき大会や体操の講座を開催。ディスカッションの時間もあり、患者やその家族、私服姿の看護師が病や日常生活の不便な点を語り合う。

 「治療の詳しい内容を聞くのは、医師に失礼かと思って控えていた」「東紀州以外の病院に通っていたとき、自分の方言が恥ずかしくて、死んでしまおうかと悩んだ」。ざっくばらんな会話の端々に、患者の積もった苦悩がにじみ出る。

 一般的に、患者支援団体は患者や家族を中心に結成されることが多く、看護師から働き掛けて設立したのは珍しい。「会は、医療関係者である私たちにとっても学ぶ場。小さな声を聞き逃さないようにしている」。毎回出席する宮向井ちとせ看護部長は力を込める。

 会員の1人、御浜町栗須の農業山崎豊さん(80)は3年前、妻(77)の乳がんを宣告され「言葉にならない衝撃を受けた」。それは、先の見えない闘病生活の入り口だった。

 抗がん剤の影響で妻の髪が抜ける。「ほら、こんなに」と差し出された掌の中身を見て、山崎さんは言葉を失った。近所からは気の毒がられたり、過剰に心配されたりで本音で話すことができない。同じ境遇の人間同士で、話し合おうと思ったのが、会に通い始めたきっかけだ。

 妻は左胸を切除しており、会で「温泉に行くのがつらい」と、思いを打ち明けた。すると、別の患者の女性が「私も同じ状態だから、一緒に行こうよ」と、笑顔で答えた。山崎さんは「ここは、残る人生を楽しもうという雰囲気にあふれている。看護師との距離もぐっと近づいた」と喜ぶ。

 「気の張らない関係をつくろう」。会員たちの目標だ。(小柳悠志)

 がん支援団体「和みの会」 紀南地方の中核医療拠点施設、紀南病院で2009年に発足。特別な参加条件は設けておらず、会員はがん患者とその家族、看護師、がんで家族を亡くした人などさまざま。会合には同病院に通院していない人も含め、毎回約20人が参加する。筋肉トレーニングなど実用的な講座のほか、クリスマスコンサートなどレクリエーションの要素も取り入れている。事務局は紀南病院看護部=電05979(2)1333

 がん 身体にできる悪性腫瘍。増殖、転移し、人間の命を奪うことが多く、3大生活習慣病の1つに数えられる。化学物質や放射線などが、がんを引き起こす要因と考えられ、病の進行とともに出血や痛み、発熱をもたらす。治療では、病巣を切除する外科療法や放射線療法、抗がん剤などを使う化学療法がある。

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