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支え合う みえの患者団体〈11〉 三重喉友会

(2012年11月11日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する

食道発声の練習法指導

画像食道発声の練習をする会長の塚本さん(右)と鷲野さん=伊賀市内で

 「たばこと酒のせいかな」−。建設会社の営業担当だった鷲野憲二さん(63)=桑名市=は約5年前、チクチクと喉が痛み出しても気に留めなかった。病院を訪れたのは半年後。消化管の一部である咽頭にがんが見つかった。「一発でアウト」。発声機能を持つ喉頭の摘出も同時に迫られた。

 受け入れがたい現実に立ち尽くしたが、医師から喉頭摘出者でつくる「三重喉友(こうゆう)会」の存在を聞いた。活動をのぞいてみると、話し声が聞こえてきた。食道内に取り入れた空気を吐き出して発声する方法などで「第二の声」を手に入れた人たちの姿を見て、心を決めた。

 手術で「日常生活」は変わった。首の付け根に開けた呼吸用の気管孔に水が入ると危険なため、顔を洗うのが怖い。免疫力が落ち、体調を崩しやすくなった。筆談での意思疎通は思うようにいかず、夫婦げんかが増えた。

 「けんかするなら、しゃべって文句を言ってやる」。食道発声の練習教本を手に、毎日公園で練習。先輩の経験者からコツも教わった。この3、4年で会話に支障がないまでに上達し、ことし4月からは指導役を任されるようになった。

 「食道発声の方法は、病院の先生では教えられない。できる患者が他の患者に教えることが一番」。会長の塚本明雄さん(68)=伊賀市=は、会の意義を語る。自身も13年前に手術して以降、多くの先輩に助けられ、勇気づけられてきた。

 言葉を発する手段は食道発声だけでなく、電気式の機器をあご下に当て人工的に声を出す方法など主に3通りある。塚本さんは「どの方法でもいい。とにかく1日でも早く日常会話ができるようになることが大切」と話す。

 鷲野さんは8月、咽頭の別の部分にがんが再発。今度は食道の一部も切除し、以前よりうまく発声できなくなった。それでも、声を求める意志は揺るがない。「摘出したものは戻ってこない。今できることをやらないと」。目標は歌うこと。すっかり色あせた練習教本には、ある言葉に二重線が引いてある。

 「必ずできる」
 (小西亮)

 喉頭(こうとう) 空気の通り道である気道の一部で、喉仏に位置する器官。声帯を振動させる発声機能と、食べ物をのみ込むときにむせないようにする嚥下(えんか)機能を持つ。がんなどで全摘出した場合、呼吸は首前方の付け根部分に開けた穴(気管孔)を通して行うことになるため、においを感じにくくなる。

 三重喉友会 1955(昭和30)年発足。喉頭摘出手術を受け発声機能を失った患者が対象で、会員数は約140人。市立四日市、三重大、伊勢赤十字の3病院でそれぞれ月1回、発声教室を開いている。同様の組織が全国に約60団体あり、NPO法人「日本喉摘者団体連合会」(通称・日喉連)をつくっている。

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