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過食 眠気 気分が沈む… 冬季うつ病 日照量低下が影響

(2012年12月25日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

人工的な光浴び改善 外出や早寝も効果

画像冬季うつ病の治療に有効な高照度光療法。専用の照明器具を使う=東京都板橋区の日本大医学部で

 冬季うつ病の症例はこうだ。女性(28)は大学生のころから、秋になると食欲が増し、朝は起きられなくなる。次第に睡眠時間が長くなり、抑うつ状態に陥る。12月が最もひどいが、4月にはすっかり元気になる。

 「食欲の秋や天高く馬肥ゆる秋、という言葉もあり、一般的にも多めに食べたくなったり、眠くなったりする。感傷的にもなりやすい」。日本大医学部の内山真教授(精神医学)は、誰でも季節の変化に影響されると指摘する。ただ「会社や学校に行けないなど、日常生活に支障があれば治療が必要」と言う。

 冬季うつ病は、季節性感情障害ともいわれる。通常のうつ病と同じく、気分の落ち込み、集中力や意欲の低下、疲れなどが見られる。特徴的な症状は過食と強い眠気だ。

 通常のうつ病は、食欲がなくなって体重が減り、眠れなくなる。冬季うつ病は逆で、例えば食欲は一日中、菓子パンやチョコレートのことばかり考えるほど強くなる。体重の増加は平均3.5〜5キロ、10キロ以上のケースもある。

 患者は女性に多い。症状は10月ごろから始まり、3月には快方に向かう。これが2年以上続くと、冬季うつ病の可能性が高くなる。進行すると、夏は軽いそう状態になり、買い物をし過ぎたり、普段よりも社交的になったりする。

冬季うつ病チェック表

 冬季うつ病の原因は、日照時間や日の出から日没までの日長時間の短さに関係している。目が感じる光の刺激が減ると2種類の脳内ホルモン、セロトニンとメラトニンの分泌量が変化する。

 精神を安定させるセロトニンは減って脳の活動が低下し、うつ状態を引き起こす。一方、セロトニンの生成に必要な糖質を取ろうと、炭水化物を中心に食欲が強くなる。睡眠を促進するメラトニンは増えて、睡眠時間が長くなる。

 このため、緯度が高く、曇りや雨、雪の日が多い地域で起こりやすい。北欧ではよく知られた病気で、日本でも北海道や東北、北陸地方の日本海側に多く見られる。

 治療法は、明るい光を浴びる「高照度光療法」が有効とされている。専用の照明器具で人工的に光を浴び、体内時計を正常に戻す。器具は5千ルクス以上の青い光を出すものが良い。目の網膜に届かないと効果がないため、正面に器具を置いて本を読むなどし、なるべく午前中に30分から1時間ほど浴びる。

 国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長は「精神科の外来では、20人に1人は冬季うつ病といわれているが、普通のうつ病と誤診され、抗うつ薬を処方されて終わってしまう」と言う。高照度光療法は診療報酬の対象外で、導入しているのは一部の医療機関に限られる。専用の照明器具は、インターネットなどで2万〜4万円で購入できる。

 冬季うつ病が悪化して室内に引きこもってしまう前に、自然光を利用するのも1つだ。治療に必要な明るさの5千ルクスは、曇り空や、晴れた日中の窓辺と同程度とされる。朝はカーテンを開け、午前中に外出して日光を浴び、夜更かしをしないなど、規則正しい生活を心がけるのも大切だ。

 内山教授は「冬季うつ病の存在を知っていることが生活のプラスになる。季節に応じて上手に行動するなど、自分なりの対策をすると予防になる」と話していた。

 毎年、秋から冬にだけ気分が落ち込む。やたらとご飯や甘いものが欲しくなり、眠くてたまらない−。そんな症状に苦しんでいるのなら「冬季うつ病」かもしれない。食欲や睡眠時間が増大し、春には自然に治るため、通常のうつ病とは異なり、治療法も違う。専門家に聞いた。 (発知恵理子)

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