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静岡の病院〈48〉 森町家庭医療クリニック

(2013年1月27日) 【中日新聞】【朝刊】【静岡】 この記事を印刷する

家族全員の主治医に

画像電子カルテを確認しながら治療方針を検討する指導医の鳴本さん(左)と研修医=森町草ケ谷で

 「一家に1人のかかりつけ医を」の精神で森町が開設し、1年が過ぎた。全科の診療能力を持つ医師が家族全員の主治医になる家庭医療を実践する診療施設だ。内科、外科、小児科から救急、産婦人科、心療内科と、高いレベルで人間を丸ごと診られる家庭医療専門医の養成機関でもある。

 一線にいた医師を含む7人の研修医が3年間、各診療科の外来で研さんを積んでいる。指導医は2人。隣接の公立森町病院と一体になって取り組む。

 家庭医療の先進国、米・ミシガン大の家庭医学臨床助教授だった佐野潔所長(61)は「家族のどんな組み合わせも1人で90パーセント診られること」と家庭医を定義する。「家族すべてを見渡しながら診察するのが効率的で、経済的。無駄な検査や薬が減る。あちこち通院せずに済む」ともいう。

 各診療科の専門医を目指す傾向が国内にある中、佐野所長は「部分的に診られる10人より、全科診られる4人がいる方がいい」。万能な家庭医の養成は、医師偏在問題の解消につながると期待される。

 クリニックの診察は予約制で初診は30分、再診に15分をかける。家族の来歴までじっくり聞くと、生活習慣や人間関係など、表面化していない問題が見えてくる。診察した研修医は、いったん院内の指導医のところに行く。治療方法を一緒に考え、患者のもとに戻って処置をする。

 指導医の鳴本敬一郎さん(34)は「自分で考えさせ、調べさせたり議論したり。心配な時は一緒に診察する」という。重篤な患者は森町病院に引き継ぐ。ある男性研修医の担当事例。高血圧、不眠症、アルコール依存症と、数々の問題がある70代男性を救急外来で診療した。多くの薬を飲んでいるが改善しないという話に耳を傾けた。その後治療したところ、1年ほどで改善した。すると、高脂血症に悩む男性の妻や、精神不安定な息子もやってきた。家族の相関関係を把握して治療し、それぞれの症状改善に結び付いた。

 クリニックは米国の標準スタイルを取り入れている。各診療科に合わせてアレンジ可能な診察台は、国内に既製品がないため特注した。医師の側が診察室を移動する効率重視のシステムになっている。

 家庭医養成の取り組みは、森町と磐田、菊川両市が連携して進めている。研修医はこれら自治体の公立病院各診療科でも研修を重ねている。 (河野貴子)

 母子同時に診察

 中村昌樹公立森町病院長の話 森町のように、生活圏での医療を提供する立場では、科別、臓器別でなく、家族全体を全人的に診る医療が求められる。家庭医は母子同時に診察し、女医も増えたことから女性患者も受診しやすくなった。地域の人に頼りにされていると感じる。

 森町家庭医療クリニック ▽2011年12月、公立森町病院横に町が開設▽外来で全科を診療▽鉄筋コンクリート造り2階建て。1階は診療施設、2階は研修施設▽町は施設北側に天竜浜名湖鉄道の新駅を設置する計画で、14年度の利用開始を目指す▽森町草ケ谷▽電0538(85)1340

画像森町家庭医療クリニック

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