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診療は育児見守る場 福井大子どものこころの発達研究センター 友田明美さん

医人伝

(2013年3月19日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

「虐待の連鎖を断ちたい」 教授 友田明美さん(52)

画像「虐待の連鎖を断ちたい」と語る友田明美(ともだ・あけみ)教授

 福井大には「子どもの心」の問題を科学的に解明し、支援策を研究する「子どものこころの発達研究センター」がある。センターが発足した2011年、公募に応じて母校の熊本大から赴任した。福井大医学部付属病院の「子どものこころ診療部」で、小児科医として週2回、外来を受け持っている。

 「最先端の研究成果を患者に還元したい」という。

 熊本大在籍時の03年、米国ハーバード大に客員助教授として赴任。このときの研究で、虐待のストレスが脳に刻む“傷”の存在を明らかにした。

 成人の脳を虐待された経験の有無で比較。4〜12歳で言葉の暴力を受け続けた人は、聴覚をつかさどる脳の一部が、性的虐待を受けた人は視覚をつかさどる部分が、それぞれ変化していた。「脳は、過酷な環境に適応するようになる」と説明する。

 長期間、体罰を受けてきた人も、感情や意欲にかかわる前頭葉の一部が20%ほど小さくなる。

 「そういう人はキレやすい。衝動的な行動を取りやすく、非行を繰り返す」と体罰の発達段階への悪影響を指摘する。

 診療部の外来は、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症など、発達障害の子どもたちが多く受診する。母親たちが育児の難しさ、不安を訴えることも多い。

 そんなときには、発達障害の正しい知識とともに、虐待が脳に影響することを伝える。同時に、子育ての大変さをうなずきながら、しっかりと聞く。親にたまったストレスを軽減するためだ。子どもへの適切な対処の仕方も伝える。親を支えることが、子どもの育つ力を引き出すことになる。「診療は総合育児支援の指導の場」という。

 熊本市生まれ。児童虐待を初めて目にしたのは、鹿児島市立病院の救命救急センターに研修医として勤務していた1987年。虐待を受けた3歳の男児が運ばれてきたが、命を救うことはできなかった。その経験から、虐待と発達過程の子どもの心の関連性に目が向いたという。

 「頑張って子育てする母親を見守ってあげたい。虐待は、世代を越えて受け継がれる。その連鎖を断ちたい」と話す。(土屋晴康)
福井大子どものこころの発達研究センター(福井県永平寺町)

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