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支え合う 患者たちの絆〈33〉 美濃市地域腎友会

(2013年4月21日) 【中日新聞】【朝刊】【岐阜】 この記事を印刷する

不安解消へ団体結成

画像人工透析を受ける患者たち=美濃市中央の美濃病院で

 美濃市笠神の小林依子さん(70)は車を止めてハッとした。自宅から買い物に向かったはずだったが、着いたのは、週3回、透析治療の夫満さん(76)を送迎している市立美濃病院。疲労が思考を惑わした。運転席から建物を眺め、ため息が漏れた。

 タクシー運転手だった満さんは生まれつき腎疾患があった。食欲不振に吐き気が続いた20年ほど前、病院の尿検査で透析患者になった。だが人目を盗んでたばことコーヒーを続けた。今は体中がかゆく、脚には激痛が走る。切断をも考えている。

 依子さんに休みはない。深夜でも身をよじらせ「痛い」と泣きじゃくる満さんに添い、患部を塗り薬でさする。娘は県外の病院に勤める。「主人が辛いのは分かる。けど私だって…」。朝だけで精神安定剤など7種類の薬を服用しなければ1日を過ごせない。

 「私が体調を崩したら」「地震や豪雨で道路が遮断されたら」。満さんが4時間の透析を終えると、依子さんは次回の通院に不安が生じる。美濃病院の透析患者の9割は通院に車を使い、同じ悩みを抱えている。

 通院への行政の支援は市町村によって異なる。郡上市は通院代やガソリン代を補てんするが、美濃市は初乗り運賃のタクシーチケット24枚を補助。相乗りの予約型デマンドタクシーもあるが、依子さんは「運転手さんに夫の介助をさせられない」とためらう。

 こうした生活上の不安を解消するため、NPO法人県腎臓病協議会(県腎友会)は、病院ごとにつくる患者組織に加え、地域単位の患者団体の立ち上げを提唱した。県内では23団体に広がり、美濃市では3月に「市地域腎友会」が誕生した。

 年1回の総会のほか、患者や家族が交流、慰労する親睦旅行を計画。食生活を学ぶため管理栄養士を招いた食事療法講座など予定している。さまざまな視点で意見をまとめ、福祉サービスの向上を行政に働き掛ける。

 山中武英会長(69)は「透析がないと僕らには明日はない。力を合わさなければならない」と訴える。

 満さんは加入していないが「ほかの患者や付き添いとおしゃべりができると、気持ちが落ち着く」と依子さん。山中会長は「患者が1つにならなければ、将来も同じ状況が続いてしまう」と呼び掛ける。

 患者が増え、行政の助成制度の行き詰まりも危ぶまれるという。それでも一生付き合っていかなければならない治療。患者や付き添いの手で輪を広げ、将来にわたって周囲の理解と行政の支援を求める。  (成田嵩憲)

 腎臓病 血液から尿素などの老廃物をろ過して排せつする腎臓の働きが悪くなる病気。糖尿病が原因の患者が多数を占める。機能がほとんど失われた状態が腎不全で、多くは「ダイアライザー」と呼ばれる機器に動脈から血液を送り込み、浄化して静脈から体内に戻す人工透析治療を受ける。

 ▽美濃市地域腎友会△ 2013年3月、美濃病院と中濃厚生病院、岐北病院の透析患者ら34人で結成。市役所や企業との交渉窓口を一本化した。会報はないが、4月の総会と勉強会、日帰り旅行、イベントを通じた腎臓移植推進キャンペーンなどを計画。問い合わせは、山中武英会長=電090(7319)0066=へ。

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