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<びわこの光~重症心身障害児・者の今> (3) 地域の支え

(2013年5月5日) 【中日新聞】【朝刊】【滋賀】 この記事を印刷する

「体力続く限り家族で」 不安抱え介護

 夜や朝方問わず、血中酸素の不足や脈拍速度の変化を知らせるアラーム音が家に鳴り響く。大津市の主婦土田裕美子さん(48)はそのたび、長男の有希(ゆうき)さん(21)に駆け寄る。体の向きを変え、たんの吸引をする。緊張が続く。細切れの睡眠時間をすべて合わせても1日3、4時間ほどだ。

診療を受ける土田有希さん(中央)を囲む母の裕美子さん㊨や医師、看護師ら=滋賀県草津市のびわこ学園センター草津で

 脳の形成障害により、自宅で呼吸器や脈拍を測る機器に助けられながら暮らす有希さん。てんかんと自律神経の不安定さが原因の2種類の発作が毎日のように続くことも。裕美子さんは「自宅で対応できないときもある。特に夜は不安」と言う。
 有希さんの2人の弟の子育てもあり、裕美子さんは、学園の短期で重症児者を受け入れるショートステイ(短期入所)を利用してきた。「見てもらえるところがあると気分的に楽」と実感するが、満床で希望通りの期間に入れないこともあり「短期用病棟があれば」と思う。
 家族写真を撮るときにはいつも、父母、大学1年と高校1年になった弟たちが有希さんを囲む。「家族で一緒に過ごしたい。体力が続く限り在宅で」と願う。一方で、家族で支えられなくなった場合に備え、長期入所の希望申請はしてある。
 学園にはセンター野洲と草津を合わせて入所者用ベッドは計254床。常にほぼ満床状態で、2007年で52人だった入所待機者は、11年には85人に上った。
 計21床ある短期枠も埋まっていることが多い。保護者が入院したり、冠婚葬祭などで介護できない緊急時の対応に、学園も苦慮している。センター草津施設長の口分田(くもで)政夫医師(55)は「短期枠をもっと増やさないと」と危機感を募らせる。
 障害児・者の高齢化に伴う障害の重度化、保護者の高齢化や病気、死亡などによる対応不能などを背景に、入所待機者は増加している。半面、入所待機者の保護者の中には、土田さんのように、短期枠や通所支援の活用をしながら、可能な限り家族で支え、在宅や地域でそのまま暮らしたいとの思いを持つ人も少なくない。
 入所待機者増と短期枠確保が満足にできないのは、重症児・者を在宅や地域でケアする環境が十分に整っていないためだとの指摘もある。保護者の負担軽減策の充実、地域で暮らし続けても安心できる支援の仕組みの構築が急がれる。
 こうした課題に対応する動きもある。昨年8月に滋賀県守山、野洲、草津、栗東の湖南地域の医師会が中心になって立ち上げた湖南圏域の重度障害児者に対する医療ネットワーク検討委員会だ。開業医や地域の病院が重症児・者を支え、それをさらに学園がサポートするという連携関係を築いていくのが狙い。現在、重度障害児・者家族のニーズ把握調査や学園の見学会などを計画している。
 重い障害のある人たちがもっと住む場所を選べて、普通の生活を送れるようにすることが、びわこ学園の負担軽減にもつながる。学園の山崎正策(しょうさく)理事長(64)は「開業医や総合病院、びわこ学園など地域のすべての医療資源が、一人一人の重症児・者にかかわっていく形を最終的につくっていかないといけない」と言う。

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