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子どもの飲酒は危険 依存症や発達の遅れも

(2013年6月7日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

心身に大きな影響

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 宴席には付きもののお酒。酒に甘い文化とされる日本では、「1杯くらいなら」と、つい子どもに勧めてしまう大人もいる。だが、ルールは「お酒は20歳から」。そもそも飲酒は未成年者にどんな悪影響があるのか、生活部取材班が調べた。

 「未成年者飲酒禁止法」の制定は1922(大正11)年。国民の生活レベルが、今とは大きく異なる91年前から変わっていない。厚生労働省がん対策・健康増進課は「飲酒年齢は国によって19歳や21歳などばらつきがある。20歳という年齢に科学的根拠があるわけではないが、心身への影響から区切りとなっている」と説明する。

 心身への影響とは、具体的にどのようなものなのか。

 未成年者の飲酒問題に詳しい久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の樋口進院長(精神医学)は「人間の脳が成熟するのは20歳ごろ。それまでは神経細胞が発展途上で、せっかく育った神経細胞が飲酒で死んでしまう」と話す。

 特に人間らしさをつかさどる脳の前頭葉に影響する。萎縮して、無気力や記憶力の低下につながるほか、他人への配慮ができなくなる可能性も。さらには、骨の成長や生殖機能の発達の遅れも指摘されている。

 子どもはアルコールを分解する肝臓の酵素が十分でないため、急性アルコール中毒になりやすい。飲み始めてから依存症になるまでの期間も、大人より短いという。

 依存症を専門治療する井之頭病院(東京都三鷹市)の菊池健院長(精神科)は「患者は、10代から飲み始めたケースが多い。我慢することの大切さを学ぶ子ども時代にお酒を飲むと、適量が分からず、飲む量を抑えられなくなる」と話す。

 ただ、子どもの飲酒はここ10年余り、減少傾向。厚労省の調査によると、特に男子で顕著で月1回以上、飲酒している割合は、中学1年で96年に17%だったが、2008年は4.8%、高校3年は53.1%から27.1%にそれぞれ減った。

 一方、飲酒経験を場面別でみると「冠婚葬祭」が29%、「家族と一緒」が25%で、2つで半数を超える。親族などの集まりで「あなたも大きくなったから、1杯どう」と未成年者に勧めて、それが飲酒習慣につながりがちな構図が浮かび上がる。

 大人は子どもの飲酒に対して、どんな態度で臨めばいいのか。

 教育評論家の尾木直樹さんは「自分の小さいころや学生時代を判断材料にしていてはだめ。『酒ぐらいいいじゃないか』という緩い意識は、今の時代には禁物」と指摘する。「アルコールの特性や害について、小学生のうちに、家庭や学校で話す場がもっとあっていい。イッキ飲みの強要で犠牲になる大学生がいる社会を変えないと」と強調する。

 東京成徳大の田村節子教授(学校心理学)は、多感な思春期の子どもたちが大人に反発しがちなことを懸念する。「頭ごなしではなく、アルコールの心身への影響を示すデータなどを準備して、毅然(きぜん)とした態度で『心配している』という思いを伝えて」と提案している。

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