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16歳にがん余命告知 昨年末、名大病院

(2013年8月5日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

終末期医療、自ら選択

17歳の誕生日前、看護師から、大好きなガンダムをあしらったケーキを贈られた大珠さん。穏やかな終末期だった=昨年12月末、名古屋市昭和区の名大病院で(菊本直樹さん提供)

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)の小児病棟で昨年末、小児がんの少年=当時(16)=に対して初の余命告知が行われた。少年はその後の治療のあり方を自ら選択。希望に沿った終末期医療が行われ、ことし3月、17歳で永眠した。未成年のがん患者への余命告知は、全国でも数少ない。同病院小児科チームは、11月29日から福岡市で開かれる日本小児血液・がん学会で発表する。(編集委員・安藤明夫)

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 少年は、愛知県碧南市、運送業菊本直樹さん(47)の長男大珠(たいじゅ)さん。 中学1年のときに、左あごに難治がんの悪性エナメル上皮腫を発症。肺と背骨に転移が見つかり、名大病院に入院した。あごのがん細胞の摘出と強力な化学治療により、いったんは退院できるまで回復したが、高校進学後に再発した。

 治療法はなく、抗がん剤を投与すると、しばらくは歩けるようになるものの副作用に苦しむ状態。両親が「本人に正しく状況を伝え、これからの過ごし方を選ばせてやりたい」と希望し、昨年12月15と19日、主治医の高橋義行准教授が2回に分けて余命を告知した。

 これから痛みや息苦しさが強まる可能性があり、痛み止めに24時間の点滴、呼吸の苦しさには「ウトウトと眠る薬」を使うと話し、大珠さんの了解を得たうえで「この治療を始めると1週間ぐらいで、眠っている時間がかなり長くなるので、会いたいと思っている人、手紙を書きたいと思っている人がいたら、そうしてほしい」と説明した。

 大珠さんはベッドに横向きに寝たまま、何度もうなずいたという。延命の人工呼吸、心臓マッサージを行わないことも確認した。

 大珠さんはその後、「友達と遊びたい」と抗がん剤治療の再開を希望したが、効果がなく3日間で終了。さらに、自宅に近い病院のホスピス病棟に移ることも検討したが、名大病院にとどまって病棟の友達や家族と過ごすことを選んだ。痛み止めのモルヒネの量を増やす時も自ら判断した。3月12日朝、眠るように亡くなった。

 高橋准教授は「小児がんの病名告知は、多くの病院で行われるようになり、名大小児科では6歳以上の子の全員に告知している。ただ、終末期の余命告知はどうしてもご両親がためらいを感じることが多い。本人の希望を尊重することが、本人にも家族にも納得できる終末期につながる」と話す。

小児がん医療の前進

 名大病院とともに小児がん拠点病院に選ばれている三重大病院(津市)の堀浩樹教授(小児科)の話 小児がん医療における一つの前進だと思う。残された人生の治療選択を自身の判断でできることが医療の本質であり、スタッフとご家族、患者さんの力によって成し遂げられたと思う。

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