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小児がん 本人に病名告知 チームケアでつらさを緩和

(2013年10月1日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

名大病院と三重大病院の取り組み

画像多職種で、小児がんの子のケアについて話し合うトータルケアワーキンググループの会合=名古屋市昭和区の名古屋大病院小児科で

 小児がんの子どもたちが病気と闘うために大切なのは「つらい治療の意味を理解すること」。そのためには、治療前に本人に病名を告知することが望ましいが、病院によって態勢や意識のばらつきは大きい。全国15カ所の「小児がん拠点病院」に指定されている名古屋大病院と三重大病院の病名告知の取り組みを紹介する。(編集委員・安藤明夫)

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)小児科の会議室に、スタッフたちが続々と集まってきた。看護師チームのほか、小児科医、児童精神科医、看護師、入院中の子どもを支えるチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)、薬剤師、管理栄養士など二十数人。「トータルケアワーキンググループ」の月例会だ。

 病状に不安のある子を院内学級に通わせてもいいか、両親の悩みにどう対処するかなど、議題はさまざま。同病院は治療の難しい小児がんの子が他病院から紹介されることが多く、入院生活中に起きる問題を多職種で協議する場が必要と、6年前に始まった。同時期から6歳以上の全員に治療前に病名を告知する方針が徹底された。

 「この会議があるから告知をする医師も孤独ではない。何か問題が起きれば、みんなで対応できる安心感がある」と、高橋義行准教授は話す。

 両親が子どものショックを恐れる場合も多いが、治療で髪の毛が抜けたり、吐き気に苦しんだりするつらさを説明し、「病気と闘うために必要」と理解を求める。他病院で「がんではない」と説明を受け、不信感から精神的に不安定になった子もいた。転院後、正しい病名告知で落ち着いたという。

 名大病院では、昨年末に16歳の少年に余命が告知され、話題を呼んだが、これも病名告知からの信頼関係があったからこそ。CLSの佐々木美和さんは9月28日、名古屋市内で開かれた「中部小児がんトータルケア研究会」で報告した。終末期で個室に移った子には通常、面会が制限されるが「本人の希望を尊重して友達との面会のルールをつくるなど、会議で協議してきめ細かな対応をすることで、最期まで本人らしく過ごせたと思う」と振り返った。

 幼児には絵本、紙芝居で

 三重大病院(津市)小児科では、堀浩樹教授が中心となり、聖路加国際病院(東京)や浜松医科大病院(浜松市)などの先進例を勉強し、スタッフで2年間議論。1998年7月、治療前に病名告知する方針を打ち出した。告知に反対する両親には「病名は告げないが、病状や治療の必要性を本人に話したい」と説得。現在はほぼ100%の同意を得られるという。

 「急性リンパ性白血病って、どんな病気か知ってる?」と聞いて、おおよそ理解できるのは10歳前後から。それ以下の子には、紙芝居や絵本なども使う。

 同病院は三重県内で唯一の小児がん治療施設。初期から治療後の経過観察まで、長く関わる患者が多い。病状や年齢によって本人が知るべき内容も変わる。「定期的に理解度を点検し、説明する必要があり、そのためにも治療前の本人への告知が大前提」と堀教授。

 病名告知の態勢が不十分な病院がまだ多いことに「患者さん本人にショックを与えることは当然予想できる。それをためらうのではなく、不安を最小限に抑える対処を考えることが必要」と話す。

中学生への告知進む 小学生以下は依然低率

 小児がんの病名告知はまず両親に行い、その同意を得た上で本人に告げる。専門医らで組織する小児白血病研究会の2008年の調査では、中学生の患者の80%以上に本人告知している病院が71%あった。1997年の調査では、「中学生の20%以下に告知」と回答した病院が最も多く、医療者の意識が大きく変化したことを示す。しかし、小学生以下への告知率はまだ低く、何年もたって治療が一段落してから告げるケースもあり、対応はさまざまだ。

 名古屋大のワーキンググループにも関わった児童精神科医の吉川徹さん(あいち小児保健医療総合センター医師)は「告知しない場合、本人、家族、医療スタッフとの間に、触れてはいけないタブーができてしまう。敏感な子だと大人の動揺を察し、相談すべきことができなくなり、あいまいな情報から誤解してしまうこともある。告知のリスクはもちろんあるが、告知しないリスクもある。子どもの理解度に応じ、周囲が協力して計画的に行うことが望ましい」と話す。

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