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下半身動かぬセラピー犬 病越え 「終末」に寄り添う

(2014年1月4日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

床ずれ 看護師のアドバイスで乗り越え

ホスピスでがん患者とふれあうセラピー犬のシャネル=名古屋市中川区の名古屋掖済会病院で

 下半身の動かなくなったゴールデンレトリバーの雌、シャネル(9歳)が、セラピー犬として緩和ケア病棟(ホスピス)で残りの人生を過ごす末期がん患者らを癒やしている。足を引きずりながらも患者に寄り添う姿が、笑顔の輪を広げている。

 「気立てのええ子やな。頑張れよ」。昨年11月下旬、名古屋掖済会(えきさいかい)病院=名古屋市中川区松年町=のホスピスで開かれた、患者が動物とふれあう「アニマルセラピー」。車いすの女性患者が呼び掛けると、シャネルは大きな体を前足で支え、顔を近づけた。

 シャネルは犬の繁殖業者に飼われてドッグショー(品評会)に出ていたが、5年前に子宮の病気で引退。中部アニマルセラピー協会(名古屋市千種区)が譲り受け、誰に触られても嫌がらないセラピー犬に育てた。

 同協会は2011年2月から月1回、シャネルなど犬数匹を連れて名古屋掖済会病院のホスピスを訪れ、アニマルセラピーを続ける。つぶらな瞳のシャネルはすぐ人気者となり、病室も回って愛嬌(あいきょう)を振りまいていた。

 ところが12年の秋になって突然、下半身が動かなくなった。神経の働きが阻害される病気で、次第に後ろ足が人間の床ずれのような状態になり、一部が壊死(えし)して苦しむようになった。治る見込みもなく、協会理事長の青木健さん(44)は安楽死も考えた。

 そこでシャネルに救いの手を差し伸べたのが、名古屋掖済会病院のホスピスの看護師江口しのぶさん(41)ら。床ずれの対処法をアドバイスしたところ、翌年六月に復帰できた。

 患者たちも看護師と一緒にシャネルに贈る名前入りバンダナを作り、回復を祈ってきた。病棟に着いたシャネルは大喜びで足を引きずり、患者たちに駆け寄った。ただ末期がん患者が暮らすホスピスのため、シャネルの復帰を心待ちにしていた患者の1人はその1週間前に亡くなっていた。

 江口さんは「治療だけでは取りきれない痛みもある。シャネルのけなげな姿を見て、患者がぱっと笑顔になることがある。その笑顔に私たちも元気をもらう」と話している。

 アニマルセラピー 動物との触れ合いで得られる精神的な安定や癒やしを、医療や福祉、教育現場で活用すること。日本では生活の質の向上を目指し、一部の高齢者施設などで採り入れられている。

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