つなごう医療 中日メディカルサイト

STAP研究 成果急ぎ、精度後手 論文至上主義が背景に

(2014年3月15日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

理研理事長 「氷山の一角かも」

 華々しく世に出た万能細胞「STAP細胞」の研究論文は、2カ月足らずで「白紙撤回」の公算が大きくなった。理化学研究所(理研)の十四日の中間報告で、実験データの改ざんや文章の盗用などの疑いが指摘された。科学の世界を覆う論文至上主義が、こうした問題が相次ぐ背景にあると指摘する声がある。(北島忠輔、今村太郎)

【関連記事】 STAP疑惑底なし メディア戦略あだに
【関連記事】 STAP論文「ずさん」 理研認める
【関連記事】 小保方氏「未熟だった」
【関連記事】 論文「査読」 大物共著、チェック甘く ネイチャー
【関連記事】 STAP 「光るマウス」疑惑 解消されず

 報道陣であふれ返った理研の会見。小保方晴子ユニットリーダーを採用した発生・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長はSTAP論文を不適切と認め、「論文の体をなしていない。あってはならないこと」と何度も繰り返した。

 科学者にとって、論文は自分のアイデアを実験で証明したことを示す生命線。批判に耐えて論文として残らなければ研究がないのと同じ、と話す人もいれば、「宝物」という学者もいる。

 名古屋大大学院の篠原久典・理学研究科長は「撤回は単なる修正とは違い、研究者生命に影響する大きなこと」と話す。

 STAP論文を掲載した英科学誌ネイチャーは、セル、サイエンスと並ぶトップジャーナル。学者の間では頭文字を取って「CNS」と呼ばれ、世界が注目する最新の研究成果が発表される。

 生命理学を専攻する名古屋大大学院の松本邦弘教授は「CNSに論文が載ると、教授への昇進や研究費に直結する」。一流誌への論文掲載が重要な評価軸になっているのが現状だ。その結果、実験の成功度が低くても、成功時のデータを前面に出して論文が投稿される例があるという。

 この日の会見に急きょ、出席した野依良治理事長は「今回の問題は氷山の一角かもしれない。起きてはいけないことが起きている」と沈痛な表情を見せた。若い研究者に対する実験や論文執筆のトレーニングが必要との認識を示した。

 論文の不正や撤回について著書のある愛知淑徳大の山崎茂明教授は「苛烈な研究競争が未熟な状態での論文の発表を招いている」と分析する。山崎教授によると、国際的な学術論文データベースで、過去約15年間に3053件の論文が撤回されている。山崎教授は「データを正確に集めて論文で発表することは最低限の倫理。問題の論文は、成果を支える証拠に不備があり、撤回されるべきだ」と指摘している。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人