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性器ヘルペス治療 検査法が保険適用

(2014年8月12日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

誤診減らし重症化防げ 服薬続け、再発を抑制

画像三鴨廣繁さん

 性器などに水ぶくれができる性器ヘルペス。ごくありふれたウイルスで起きる性感染症の一種だが、排尿時の痛みから尿路感染症などと間違われ、治療が遅れて重症化する場合もある。再発しやすいのも特徴。頻繁に再発する人は薬を予防的に毎日飲み、再発を抑える「再発抑制療法」という選択肢もある。(佐橋大)

 昨年9月、婦人科や泌尿器科を掲げる大阪市の早川クリニックに、30代の女性が来院した。数日前、別の医療機関で高熱と陰部の痛みを訴えたところ、尿路感染症と診断され、抗生物質の点滴を受けた。だが、症状は悪化。別の病気を疑い、同クリニックを受診し、性器ヘルペスと分かった。来院時には痛みで歩行困難になっていた。副院長の早川潤さん(45)は「もっと早く正しい治療を始めていれば、重症化は防げたかも」と話す。

 性器ヘルペスは、口唇ヘルペスと同じ単純ヘルペスウイルスで起きる。性器などに赤いブツブツや水ぶくれ、潰瘍ができる。性行為などで感染し、4〜10日で発症。女性は外陰部や膣(ちつ)の入り口、尻に、男性は陰茎や尻などに症状がよく出る。最初は痛がゆさを感じることが多い。

性器ヘルペスの症状が出やすい箇所

 初めてかかったときは強い痛みや発熱を伴うことが多い。ウイルスは神経節に潜み、疲労やストレスを機に何度も再発する。

 早川さんによると、皮膚の症状から接触性皮膚炎、排尿痛から尿道炎と誤診するなど、約2割が初発段階で別の病名だったとの調査結果もある。「従来の検査法は結果が出るまでに時間がかかり、ほとんど問診と診察だけだった。昨年末に新検査法が保険適用され、状況は変わりつつある」と早川さんは指摘する。

 新検査法は検出感度が低いため、場合によっては陽性なのに陰性になる可能性もあるという。ただ、綿棒で患部をこすり、専用の液体に浸すなど手順が簡単な上、10〜15分で結果が分かるメリットがある。

 ウイルスの増殖を抑える抗ヘルペスウイルス薬を軸に治療する。この薬は症状を抑えて回復を早める。ウイルスは完全になくならず、普段は休眠状態だが、ストレスや疲労で再び活動する。再発頻度は年5回以上が1割強で、毎月のように再発する人もいる。

 愛知医科大(愛知県長久手市)の臨床感染症学主任教授、三鴨廣繁(みかもひろしげ)さん(53)は「患者さんにとって、再発の繰り返しは精神的に非常に苦痛。ストレスも再発の要因なので、治療では肉体と精神のケアを同時に行う必要がある」と話す。

 三鴨さんによると、肉体的な痛みが繰り返される不安感や苦痛に加え、「パートナーにうつしてしまう」「結婚できないのでは」などと悩む患者は少なくないという。そうしたストレスが再発の引き金になる。三鴨さんは他の通院者に出会わないよう、患者の予約時間帯を遅めにするなど、話がしやすい雰囲気づくりに努めている。

 1年に6回程度以上再発する人は毎日、通常の治療の半量の抗ヘルペス薬を飲み、再発を減らす「再発抑制療法」を保険診療で受けられる。海外での臨床試験では1年の治療期間中、再発率が約7割減った。

 服用を続けるうち、体内のウイルス量を減らし、再発の可能性も減らす。治療は最長1年。ウイルス量が十分に減れば治療後も再発を避けられる。再発した場合は、再治療もできる。

 再発時はウイルスの排出が多く、性行為で感染を広げる危険性が高まる。一般に、性器ヘルペスの人がパートナーに1年間で感染させる割合は約1割とされるが、再発抑制療法でその可能性も減らせる。三鴨さんは「再発抑制療法は、うつすかもしれないという心配も減らせる。再発の前兆があった場合、気軽に相談できるかかりつけ医を持つことが不安の対策になる」と話している。

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