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精神科医療の取り組みを ギャンブル依存症 医師らシンポ

(2014年8月19日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

診断・治療法の確立模索

画像ギャンブルへの病的なのめりこみについて、さまざまな治療モデルが報告された日本精神神経学会のシンポ=横浜市で

 自民党など超党派の議員連盟が「統合型リゾート推進法案(カジノ法案)」を提出し、秋の臨時国会での成立を目指す中、ギャンブル依存症への対策強化を求める声が高まっている。これまでパチンコなどが大きな社会問題になりながら、医療の取り組みが遅れていた分野だ。6月に横浜市で開かれた日本精神神経学会の学術総会の報告を基に現状を考えてみたい。(編集委員・安藤明夫)

 「いわゆるギャンブル依存問題における精神科医療の役割について」と題した学会シンポジウムは、超満員の聴衆で埋まった。

 厚生労働省の厚生労働科学研究(2009年)では、男性の9.6%、女性の1.6%がギャンブル依存という深刻な結果が出ているが、ギャンブル問題と向き合う医療機関は、全国でも数えるほど。どのレベルの「病的さ」を治療の対象にするべきかという基準も定まっておらず、有効な薬物療法もまだ確立されていない。シンポでは、さまざまな治療モデルについて医師から報告があった。

 熊本県の赤木健利(たけとし)さん(71)は、アルコールや薬物の依存症と同様の集団療法を、菊陽病院(同県菊陽町)、桜が丘病院(熊本市)で取り入れてきた。「アルコールのような物質依存ではなくても、行動や対人関係など病的な状態が引き起こされる。患者同士で話し合う中で、気づきを促し、人間性の回復を図ることが、ギャンブルへの渇望を抑える力になる」と話した。借金問題を抱えている場合も多いため、多重債務者の支援団体とも連携。治療後も院内の自助グループに通いながら生活再建を目指す患者が多いという。

 神奈川県横須賀市、久里浜医療センターの河本泰信さん(53)は、全6回の外来プログラムで成果を挙げていると話した。初回が患者のタイプ分類をはじめ、精神科診断や身体疾患チェックなど。2回目は疾患教育。以後は認知行動療法の手法を用いて、ギャンブルに費やした金額を計算したり、それに代わる行動を探したりして「真の欲望の探求」と依存問題に対処していく。やめたいという意欲が弱くても、短期治療が可能な場合も多いという。

 東京都町田市、こころのホスピタル町田の蒲生裕司さんは行動分析学、行動経済学の手法で、患者が自分の考え方のいびつさに気づく治療法の取り組みを紹介。「どこの医療機関でもできる簡便な治療法の開発が大切だ」と訴えた。

 沖縄県のリカバリーサポート・ネットワーク代表の西村直之さんは、パチンコ・パチスロの依存問題に限定した電話相談=電050(3541)6420、月−金曜午前10時〜午後4時=の取り組みを話した。全国のパチンコホールに啓発ポスターを掲示してもらうことで、年間約3千件の相談が寄せられ、その8割が当事者から。依存症では「本人の否認」が障壁になりやすいが、勝負事に負けて反省しているタイミングでポスターを見ることが、相談につながりやすいという。

 これまで病的なギャンブルの問題は、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)などの自助グループや民間のリハビリ施設などが中心的に担ってきたが、カジノ解禁の論議の中で、医療の取り組みの強化も課題になってきそう。

 北里大東病院(相模原市)の精神神経科では、大学付属病院として全国で初めて「ギャンブル障害専門外来」を7月に開設した。予約制で月2回、医師2人が担当する。ホームページ(北里大精神科で検索)に自分のギャンブル熱が病的かどうかを診断するスクリーニングテストも掲載。「ギャンブルで負けた時に、勝ったとうそをついたことがあるか」「人から非難を受けたことがあるか」「借りた金を返せなくなったことがあるか」など12問で本人の気づきを促している。

 同学会の学術総会長を務めた、北里大の宮岡等精神科教授は「病気と考える範囲、適切な対応や治療を、医学の立場から明らかにしたい」と話す。

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