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一人じゃないから立ち直れる 窃盗症治療中の女性

(2014年10月26日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

自助団体に参加 不安を分かち合い前へ

画像窃盗症の患者らが参加する自助グループの部屋=群馬県渋川市の赤城高原ホスピタルで

 確実に捕まる、と分かっていた。北陸出身の30代の女性はスーパーで、手当たり次第に食品をかばんに詰め込んだ。目の前と背後に警備員がいると気づいていたにもかかわらず。「万引しなければ、という考えに支配されていた」 (西山輝一)

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 衝動的に万引を繰り返す精神疾患「窃盗症」(クレプトマニア)に悩まされる日々。女性は窃盗罪で起訴され、4月に初公判が開かれた。現在は保釈中で、治療のため赤城高原ホスピタル(群馬県渋川市)に入院している。裁判は続いており、今月末に判決が言い渡される予定だ。

 過去にも複数回の逮捕歴があり、盗んだのは食品ばかり。過食症を患っており、「食べ物がないと不安だった。家にため込むことで安心感を得ていた」。

 昔から「不安」を抱えていた。実家は親たちのけんかが絶えない環境だった。小学生のころに自分で料理をして家族に振る舞うと、雰囲気が和んだことがあった。「料理をすれば家庭が丸くなる」。みんなで仲良くしてほしいと料理を手伝う日が続いたが、その思いはいつしか強迫観念となり、心の負担に。中学時代に摂食障害を発症し、20キロ台までやせ細った。

 大学に進んでから精神科を受診。睡眠薬の処方を受けたが、飲み続けるうちに効果が薄れて服用量が増えた。過食症は治らず、食べ物を万引しては吐いた。アルコールにも依存。左の手首に幾筋も残る傷痕は、自分で切ったものだ。すべて「つらい感情から楽になりたい」ためだった。

 盗む癖を直そうと心理療法を試したが、効果は薄かった。「万引をやめられないのは、性格の歪(ゆが)みだと思っていた」

 赤城高原ホスピタルに入院したのは今年4月。院内の自助グループで他の患者の話を聴いたとき、目が覚める思いだった。「同じ悩みを抱える人がいる」。女性も周りには言えなかった過去を打ち明けた。「話してくれてありがとう」と励まされ、救われた気持ちになった。

 判決が実刑であれば刑務所に収監され、治療は中断となる。しかし、もう一人ではない。「ともに回復を目指す生涯の仲間と出会えた」。地元では夫と幼い長男も待つ。罪を償い、回復へと一歩ずつ進んでいくつもりだ。 

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