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検査の不安和らぐ絵本 心臓病の山田倫太郎君、こども病院に置く

(2014年11月18日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

体験を基に手作り 「理想の医者」つづる文章も

画像心臓カテーテル検査の本をつくった山田倫太郎君=長野県安曇野市の県立こども病院で

 「ぼくはリンリンマン。検査の不安から子どもたちを助けるために宇宙からやってきた」−。そんな書きだしの手作り絵本が、長野県立こども病院(同県安曇野市)の病棟に置かれている。作者は、同県箕輪町の会社員山田浩隆さん(40)の長男倫太郎君(13)=蓑輪中学校1年。心臓の病気で長く入院してきた体験から、小さな子たちが心臓カテーテル検査に感じる恐怖を軽くできればと制作した。(編集委員・安藤明夫)

 絵本のタイトルは「リンリンマン カテーテルってなんだのまき」。足の血管から心臓へカテーテルを通す検査の手順をQ&A形式で解説する。アンパンマンに似た主人公は、倫太郎君と同じく酸素吸入器の鼻チューブを着けている。

画像絵本の主人公は鼻チューブを着けている

 この検査は、小児科では全身麻酔で行われるが、終わってしばらくは出血を防ぐため、体を固定される。10回以上受けている倫太郎君も「ガリバー旅行記で小人に縛られるガリバーになったような気分」という。

 5月に入院した際、検査後の幼児の泣き声を聞いた。検査の意味を理解すれば、不安が和らぐのではと絵本を思い立った。病棟の子どもたちを支える専門職チャイルド・ライフ・スペシャリストの塩崎暁子さん(29)に相談。検査の説明、機器の写真などの資料をそろえてもらい、画用紙に絵を描いて、パソコンで打った文章を貼り付け、製本。1週間で完成させた。

 塩崎さんは「倫太郎君は私たちが体験していないことを知っている。それを言葉にして誰かに伝えるのはとても難しいし、勇気のいること。小さい子たちへの彼のやさしさが生んだ作品です」と話す。

 倫太郎君は生まれつき心臓の左心室と右心室が分離しておらず、機能修復のための手術を受けた。「フォンタン術後症候群」と呼ばれる不整脈、チアノーゼ、肝硬変など全身の臓器症状も抱える。今は祖父の車で中学校に通い、午前中だけ勉強する。腸からタンパク質が漏出してしまう病気もあり、しばしば短期入院して点滴治療を受ける。水分制限など生活の制約も多い。

 そんな中で、倫太郎君は小学校入学前から絵本などの創作に意欲を燃やしてきた。妖精、野菜などのキャラクターが旅行しておいしいものを食べたり、侵略者と闘ったりするお話。弟の恵次郎君(4つ)が生まれてからは、絵本の登場人物に「恵恵くん」が加わった。

 これまでに作った絵本は9冊。いつか出版することが倫太郎君の夢だ。

「理想の医者」つづる文章も

 倫太郎君の最新作は「患者が望む理想の医者−医者を目指す君へ」という5千字ほどの文章。

 恵次郎君が「お兄ちゃんの病気を治したい」と言ったと聞き、自身が考える「医師像」を、恵次郎君をはじめ医師を志す人たちに伝えたいと考え、入院中の7月に書き上げた。

 第1章では、担当医の瀧聞浄宏(たきぎくきよひろ)さん(47)が、旅行の予定に合わせて退院を早めてくれて、あこがれの出雲大社に行けたことを紹介。「病気だけを見ていればよい、というものではない。患者さんの家族、趣味等、患者さんの生活全般を見て接しよう」とつづる。

 第2章では「患者さんは、誰もが自分の受ける治療や検査等に、不安を抱えている。患者さんが子どもでも、しっかり、分かりやすく説明してあげよう」。

 入院していた5歳のころ、朝食が好物の親子丼だったのに、食べる前に検査に呼ばれ、悲しかったこと、仮死状態で生まれ「全身紫で“くたん”としていた」自分を救ってくれた産婦人科医のおかげで、今があること−生と死を見つめた子の思いが共感を呼ぶ。

 母・こづえさん(40)は現役の看護師。「よく見てるなーと思います」とほほ笑む。

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