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介護は愛情の恩返し

(2014年12月27日) 【北陸中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

金沢 本音描く絵本反響

画像施設利用者に自作絵本を読み聞かせる小坂直樹さん=金沢市涌波で

 金沢市涌波で小規模通所介護施設「リビングデイサービス」を運営する介護福祉士の小坂直樹さん(49)は、高齢者を介護する家族の本音を描いた自作絵本「あんやと!ばあちゃん」を、全国約600の児童養護施設や金沢市内の小学校などに寄付した。介護の実情と思いやりの大切さを分かりやすく伝える絵本に200通を超えるお礼の手紙が届き、介護に向き合う姿勢を見つめ直したとの感想も寄せられている。(室木泰彦)

 絵本は、介護される祖母が認知症で「あんやと(ありがとう)」としか言わなくなった日常を描いている。献身的に介護を続ける母親が小さい娘に「ばあちゃんなんか、いなくなっちゃえっておもうこともあるわよ」と率直に打ち明ける場面も。

画像小坂さんが体験を基に介護家族の本音を描いた絵本「あんやと!ばあちゃん」

 外出時、両手を引いていた祖母が橋の上で動かなくなり、母親は思わず「えーい、このままかわにながしてやろうか」と涙を流す。娘は、祖母が足元の虫を踏まないように動かなかったと気付き、虫を逃がしてやると祖母は「あんやと」。帰り道、母親は「ひどいこといってごめんね」と謝ると、祖母は笑顔で「あんやと」と返す。母親は娘に、介護が嫌になる時もあるが、親切にされた恩返しの気持ちがあることを伝える。

 小坂さんは約15年間の施設での仕事を通じ、介護に励む家族から「昔から親によくしてもらった」と聞く機会が多かったことが作品につながったと説明。「世話は家で女がするもの、という昔ながらの在宅介護でなく、もらった思いやりを、もらった以上に返したい介護が理想。そんな愛情が子へ孫へ伝わる大切さを感じてもらえたら」と話す。

 小坂さんは介護や認知症への理解を広めたいと絵本に着目し、2011年のコンクール「お母さんの絵本大賞」(石川テレビ・北陸中日新聞主催)入賞作品「おばあちゃんのノート」を幻冬舎ルネッサンスから発行しており、今回2冊目。前回と同様、全国児童養護施設協議会(東京都)に加盟している施設と、金沢市の小学校図書館などに寄付した。

 読者から届いた感想文では、9歳と6歳の子に読み聞かせたという金沢市の母親が「ありがとうの反対は当たり前とか傲慢(ごうまん)。忙しいからと感謝する気持ちを忘れていないだろうか」と投げかける。別の母親は「認知症の祖母はいつも『ごめんね』と言う。できないことを申し訳ないと思わせてしまっているのかもしれません」とつづった。

 「あんやと!ばあちゃん」は星雲社(東京都)発売でA4判、32ページ。絵は福岡県生まれのたかすかずみさんが担当。3千部発行し、金沢市のうつのみや書店などで1300円(税抜き)で販売している。

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