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家は残ったけれど(中)直せない

(2015年3月11日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

切り詰めても生活苦

画像収支表を手に、家計の苦しさを語る佐藤悦一郎さん=宮城県石巻市で

 インスタントラーメンと、レトルトカレー、250円の弁当。宮城県石巻市に住む無職佐藤悦一郎さん(70)の平均的な一日の食事だ。「男独りで、料理もできねえし」と苦笑する。

 酒もたばこもやらず、切り詰めた生活ぶり。その収支表(昨年2月現在)を見せてくれた。

 年金収入が2カ月分で約14万4千円。その半分近くが、光熱費、電話代などで消え、生活費に使えるのは、月3万5千円だ。

 震災のとき、倒れたたんすの下敷きになり、両膝にひびが入った。その直後に津波が来て、2階で3日間、石油ストーブを頼りに過ごした。膝の治療で整形外科に通い、電気治療を続けた。血圧も大幅に上昇。内科の通院も加わった。大規模半壊と認定された家の修理には、行政の助成や義援金だけでは追いつかず、貯金を使い果たした。

 宮城県は2013年3月末、被災した国民保険加入者(約18万人)に対する医療費免除を打ち切った。財政難が理由だった。佐藤さんの打撃は大きく、通院回数を減らしたため、膝の状態が悪化して歩きにくくなった。「つらくて、死ぬことも本気で考えた」と佐藤さん。福祉系の市民団体の支援で心の危機を乗り越え、現在は在宅被災者支援の「チーム王冠」のスタッフに話し相手をしてもらったり、食料支援を受けたりしている。

 県は昨年4月から、非課税世帯で住宅被害の大きかった被災者(約3万人)などへの医療費免除措置を復活させた。佐藤さんもその対象になり、通院回数を元に戻すことができたが、いつまで免除が続くか、不安だという。

在宅被災世帯 20%に精神症状

 石巻市と周辺地域の在宅被災世帯は約1万2千軒と推計されている。

在宅被災者が抱える精神症状

 震災から約1年後の12年2月、石巻医療圏健康・生活復興協議会がまとめた「在宅避難世帯健康・生活アセスメント」(調査対象2500世帯)によると、63%の世帯に高齢者がおり、健康面での支援を必要とする世帯も24%あった。抱えている病気は高血圧、糖尿病、心疾患、高脂血症の順に多かった。精神症状のある人は全体の20%。うち9割が不眠で、自殺を考えたことがある人も6%に達した。80%以上は全壊、大規模半壊の家に居住し、住宅の応急修理が済んでいない世帯は25%だった。

 昨年11月のチーム王冠の調査では、在宅被災者の住居修理は「完成」が51%あったが、これは「お金がないからこれ以上直さない」という回答も含めた数字という。代表の伊藤健哉さん(48)は「経済苦、病気、孤立など仮設住宅で起きている問題は、ほぼすべて在宅被災者にも当てはまる。その情報がなく、社会に知られていないことが何よりも問題」と話す。高齢者たちが「家を修理できていないと知られたら恥ずかしい」と、困窮状況を訴えないことも被害を見えにくくしているという。(編集委員・安藤明夫)

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