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家は残ったけれど(下)継続が力 

(2015年3月13日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

「交流バス」で孤立防ぐ

 宮城県石巻市の中心部。津波で1階天井まで水没した無職行方璋房(なめかた・あきふさ)さん(77)宅は、今も天井板を段ボール紙で代用したまま。冬の寒さが厳しい。
修理しないのは、同市の復興計画で高盛り道路の建設予定地にひっかかり、代替地に移るため。工事は大幅に遅れ、引っ越しの見込みが立たない。長男一家は仮設住宅に移り、独り暮らし。それでも、支援団体・チーム王冠の「お茶っこバス」に参加して、仲のいい友達ができ、毎日が楽しくなったという。

 お茶っこバスは集会所が壊れた地域をバスで回り、車内でお年寄り同士の交流を楽しんでもらう市の委託事業。行方さんの茶飲み友達で、独り暮らしの横山セツ子さん(67)は、自宅が全壊。その跡地でボランティアが草取りをしてくれて、励まされたという。一念発起して小さな家を建てた。
「ご近所はバラバラになったけれど、明るく生きなくちゃね」と笑う。

ニーズ酌み取り支援

 チーム王冠の活動スタイルは「在宅被災者のニーズを酌み取ること」。震災後、まず食料配給の仕組みを整えた。市から被災地区にトラックで運ばれてくる食料は、地区によっては1000食近くに及び、区長が1軒ずつ配るのは大変な負担。各地区に小グループを組織してもらい、代表者が配布方法を考える形にした。
 在宅医療のクリニックや行政、企業と組んだ実態調査にも尽力。経済苦や孤立の問題が浮かび、地域のつながりを復活させるアイデアとしてお茶っこバスが生まれた。家屋の修理、改築の相談や行政の情報を伝えたり、話し相手を務めたり。かかわってきた被災世帯は、約5000世帯。放課後クラブなど子どもたちの学習支援もしてきた。市の施設を事務所として借り、ピーク時には100人以上のボランティアが参加した。

夕方のミーティングで支援方法を話し合う、伊藤健哉さん(中央奥)ら、チーム王冠のメンバー=昨年10月、宮城県石巻市で

 代表の伊藤健哉さん(48)は、仙台市近郊で被災し、経営していた飲食店は閉めざるをえなかった。近所で仲間と炊き出しを始めたのを機に、避難所支援の活動を広げた。「チーム王冠」の由来は、伊藤さんのネット上のハンドルネーム「王冠」から。「せいぜい数カ月ぐらい」の気持ちで始めたが、被害は想像を絶した。そして石巻の惨状を聞き、拠点を移した。
 震災直後に避難所で見た光景が忘れられないという。大量の古着が支援物資として寄せられ、置き場がなくなり、被災した高齢者が涙を流しながら、焼却炉で燃やしていた。需要を考えない支援は迷惑でしかないと、肝に銘じてきた。
 震災から4年。多くの市民団体が活動を終え、ボランティアの参加者も寄付金もめっきり減った。「毎月が存続のピンチですが、石巻に移住して働きながら活動するメンバーもいる。困っている人がいる限り、続けていきたい」と力を込めた。=終わり。(編集委員 安藤明夫)


 チーム王冠の連絡先は、スタッフの大津広樹さん=電080(2837)7100。住所は〒986 0815 宮城県石巻市中里7丁目6―2、在宅避難世帯サポートセンターC棟。

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