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iPS細胞 選別自動化

(2015年3月19日) 【中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

品質管理 三重大が仲介 工場の技術応用

画像iPS細胞の自動品質管理装置を開発した福田寛二教授(右)と竹原俊幸助教=大阪府大阪狭山市で

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製する際に、質の悪い細胞を全自動で見分けてレーザーで取り除く装置を、近畿大と三重大などのグループが開発した。iPS細胞の品質管理を自動化する初めての技術となる。三重県で開発された、工場で小さな部品を選別する技術を、三重大が仲介して医療分野に応用した。 (京都支局・森耕一)

 再生医療の実用化に欠かせない、iPS細胞を大量に安くつくることにつながる技術といい、成果は近畿大の福田寛二教授(再生医療)らが日本再生医療学会で20日に発表する。

 iPS細胞は無限に増やせ、神経や筋肉などさまざまな部位の再生が期待されるが、増やす過程で不必要な変化などが起こり、数%の不良な細胞が混ざる。現在は技術者が手作業で取り除いているが、品質のばらつきが大きく、高品質な細胞の培養には年間で億単位の費用がかかっている。

画像iPS細胞の自動品質管理の流れ。(左から順に)顕微鏡画面の左下の細胞塊が異常な形なのを認識し、レーザーで焼却して取り除く=近畿大提供

 開発した装置は顕微鏡と医療用の出力が弱いレーザー、コンピューターを組み合わせた。正常なiPS細胞が円形の決まった形の塊を作って増えることから、培養中の細胞の顕微鏡画像を解析し、形が異常な細胞塊を不良な細胞と判定してレーザーで焼いて取り除く。

 現在は1万個程度の細胞を30秒で解析でき、優秀な技術者に匹敵する精度で、純度の高い細胞にすることができている。福田教授は「薬品を使わないので安全で、手作業より圧倒的に速い」と話す。

 開発のきっかけは、三重県伊勢市に研究拠点を持つ電機メーカー「シンフォニアテクノロジー」(東京都港区)が、医療分野への進出を模索したこと。同社から実用化への相談を受けた三重大社会連携研究センターが、部品の選別技術が細胞の研究に応用できそうだと助言し、細胞研究で実績のある近畿大を紹介した。連携研究センターの丸山篤芳特定事業研究員は「企業の技術力と研究現場の両方を理解して結び付ける大学の役割はますます重要になり、今回は見本になるケース」と話している。

 研究グループでは今後、全国の大学などで装置を使ってもらい性能を確認。将来は大規模な培養器にこの品質管理装置を組み込んだ、全自動iPS細胞培養システムの整備を目指す。

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