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医療被ばく低減へ目安

(2015年5月26日) 【中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

関連12団体CTなど検査で

ネットワークが決めた目安の例

 コンピューター断層撮影(CT)や陽電子放射断層撮影(PET)など、放射線を使った画像検査で受ける被ばく線量を必要最小限にするため、研究者や技師、業界の関連12団体でつくる「医療被ばく研究情報ネットワーク」が、検査部位や目的別に線量の目安をまとめた。

 被ばく線量が医療施設ごとにばらつきがあるため、一定の指針を示して撮影条件の点検や機器の調整に生かしてもらうのが狙い。東京電力福島第1原発事故で、被ばくに対する患者の意識が高まったことも、目安設定の後押しになったという。今後、学会などを通じて周知していく。

 ただし、検査の目的によっては線量を増やして画像を鮮明にする必要もあり、個別の患者に当てはめるものではない。

 放射線による画像診断は、がんなどの病気を発見し適切な治療につなげるための有効な手段。これまでに診療放射線技師の団体などが個々に指針を定めていたが、欧米で公的に規制する動きが広がったこともあり、国内の関係団体が合同でまとめることにした。

 医療施設への実態調査を行い、各施設で線量がばらついていることを確認。使用線量の多い順に並べ、検査にもよるが上から4分の1あたりの数値を「診断参考レベル」と呼ばれる目安にした。

 体重50〜60キロの成人の場合、全身への影響を表す実効線量に換算すると、頭部CTでは1回で約3ミリシーベルト、胸部のCTでは約8ミリシーベルトとなる。欧州各国に比べると日本の頭部の目安はやや高いが、胸部は同水準という。日本では年間の医療被ばくは4ミリシーベルト、食品などからの自然放射線は2ミリシーベルトほどと推定されている。

 被ばく線量は、累積でおおむね100ミリシーベルト以上になると、がんなどの健康影響が表れるとされている。

 目安は各施設での線量見直し状況や機器の進歩を踏まえて、今後、定期的に改定する方向だ。

施設間で線量差10倍 病気見逃す恐れ 低すぎでも問題

 日本診療放射線技師会が約300施設に行った調査では、成人の頭部コンピューター断層撮影(CT)検査について、幅1センチ当たりの放射線被ばく線量「CT線量指標」を比較すると、最も少ない施設と最も多い施設で約10倍の開きがあった。

 技師会によると、高い施設は「病気の見落としをしたくない」といった慎重な姿勢が反映されている可能性が考えられ、今回の目安を考慮した再検討が迫られそうだ。

 逆に、極端に低い施設では、患者の求めに押され「低い線量で一応撮影しておく」検査が行われているケースがあるという。

 技師会の諸澄(もろずみ)邦彦学術・教育専門職は「低ければよいというわけでもなく、診断に支障のない画質が本当に得られているか、検討が必要だ」と話す。

 技師会は独自の審査に基づき、適正な線量で検査を行っている「医療被ばく低減施設」を認定し、現在は48施設をホームページで公表している。

 医療被ばくの目安 病気の診断や治療への放射線利用は機器の進歩とともに拡大傾向にある。小児がコンピューター断層撮影(CT)を繰り返し受けるとがんの危険性が増すとの指摘もあり、欧州では放射線使用の適正化に向けて目安を利用することが推奨されている。正式には「診断参考レベル」と呼ばれ、海外では法的な位置づけも進む。日本では胃がんや結核の検査に使うなど利用機会も多いが、患者の医療被ばくを規制する法令がなく、国内の状況に関する詳しいデータもなかった。

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