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自閉症などの治療薬開発を視野 金沢大 東田陽博さん

医人伝

(2015年6月16日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

自閉症の治療薬を研究 特任教授 東田陽博さん(68) 

画像研究員と意見を交わす東田陽博(ひがしだ・はるひろ)さん

 脳から分泌されるホルモン「オキシトシン」と、自閉症などの関係を研究する。治療薬の開発を視野に、コミュニケーション障害に対するオキシトシン投与の有効性を確認している。「生きづらさを感じる患者さんや、人間関係に気を使っている家族がとても多い。少しでも家庭や社会で過ごしやすくしてあげたい」

 研究しているのは、自閉症などの自閉スペクトラム症。生まれつき脳に障害があるとされ、他者とのコミュニケーションが苦手だったり、言葉の発達が遅れたりといった特徴がある。

 奈良市出身。岐阜大医学部在学時に、ウサギの脳細胞と脳波の関係を探る研究に参加したことがきっかけで、脳や神経に関心を持つようになった。「先端的な研究が面白かった」と振り返る。名古屋大大学院、2度の米国留学などをへて、金沢大教授となった。

 自閉スペクトラム症と向き合い始めたのは2004年。金沢大の医学系研究科を中心に他の研究機関とも協力し、文理一体で取り組むプロジェクトのリーダーとして研究に着手した。当時は、親の子育てに問題があるという誤った認識が根強く、原因や治療の研究も進んでいなかったという。金沢大が08年に「子どものこころの発達研究センター」を設立すると、センター長も兼任した。

 マウスを使った研究では、免疫系に関わるタンパク質の分子「CD38」が欠損した個体を調査。人間のコミュニケーションに相当する仲間の認識や子育てといった能力が欠けることを確認するとともに、オキシトシンがうまく分泌しない症状があることも分かった。こうしたマウスに注射でオキシトシンを投与すると、正常に行動することも確かめられた。

 オキシトシンは陣痛促進剤などで使用されてきたが、近年は愛情や共感の気持ちに関係するホルモンとして知られる。吸入器で人に投与する臨床実験では、親の呼び掛けに応えなかった子どもが返事をするようになるなどの成果が得られた。

 共同研究する北海道大では、オキシトシンの効果を持続させる化合物の作製に成功しており、金沢大も連携して治療薬の開発を目指す。「5年後くらいには治療薬の実用化に向けた試験ができたら。効果を高める研究も進めたい」と意気込む。(谷口大河)

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