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ミルクプロテインに注目 痩せ過ぎ、胎児に影響 運動と食事で維持、増加

(2015年7月7日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像東京農業大 応用生物科学部教授 清水誠氏

 栄養の取り過ぎによる生活習慣病の増加と並んで、ここ数年は、無理なダイエットなど栄養不足による健康への影響も懸念されている。重要な栄養素であり、筋肉の維持・増加に大きな役割を果たすタンパク質と健康の関係をテーマとするマスコミセミナーが東京都内で6月に開かれ、東京農業大の清水誠教授と立命館大の藤田聡教授が講演した。

 栄養不足は途上国だけの問題ではない。先進国でも栄養不足による健康問題が生じている。特に日本ではダイエットに伴う若い女性の痩せ過ぎが大きな問題となっている。

 厚生労働省のデータによると、肥満度を示す体格指数(BMI)で「痩せ過ぎ」とされる18.5未満は、20代女性の20%以上を占める。30代でも10%を超えており、この30年ほどで目立って増えている。

 新生児の体重は2500グラムが一つの目安となるが、これに満たない「低出生体重児」が増えているのも、母親の痩せ過ぎが原因の一つと考えられている。2009年は新生児の約10%が低出生体重児だった。低体重で生まれると、大人になってから生活習慣病にかかるリスクが高いことが分かってきた。栄養不足の中でも、最も心配なのがタンパク質の摂取不足だ。20〜30代女性の体重減と、タンパク質の摂取不足は、過去の調査データからも相関関係がみてとれる。

 タンパク質は、われわれが生きていく上で必須の成分だ。不足すると、大人なら骨量の減少や骨強度の低下、血管の老化を招く。血圧の上昇による脳卒中リスクを高め、免疫力の低下をもたらす。さらに高齢者の場合は心臓が弱くなったり、筋力が衰えたりする。

 人体の中で、タンパク質は常に新陳代謝している。一部はエネルギーとして使われ、尿などの排せつ物として外へ出ていく。われわれの体は、タンパク質を毎日補給する必要がある。

画像1食当たりの食物に含まれる必須アミノ酸

 サプリメントという方法もあるが、やはり基本は食品だ。だがアミノ酸の鎖であるタンパク質にも、食品によって質の違いがある。

 牛乳などに含まれるタンパク質「ミルクプロテイン」は、必須アミノ酸をバランスよく含んでいる。必須アミノ酸は、体内で作れないため、食品から摂取しなくてはいけない。

 筋肉の合成などに必要な「BCAA」と呼ばれる3種類の必須アミノ酸と、その中でも特に重要な「ロイシン」の含有量を比較したデータがある。これを見ると、1回の食事から摂取できる必須アミノ酸の量は、牛乳が卵や豆乳、納豆、木綿豆腐より優れている。

 さらにミルクプロテインは、脂質や糖の代謝を改善して肥満や糖尿病を予防し、肝機能の改善による熱中症の予防にも効果があることが各種の研究で確認されている。

画像立命館大 スポーツ健康科学部教授 藤田聡氏

 人間の筋肉は体を動かすために使うだけでなく、食事で摂取する糖質の80〜90%を貯蔵する大事な臓器だ。体内の代謝調整でも重要な機能を担っている。

 筋肉量が減ってしまうと糖質が貯蔵できなくなる。ひいては血液中の中性脂肪が増え、糖尿病へとつながるリスクが高まる。筋肉が少なくなることは、病気と同じと考えてほしい。心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患も招きやすくなる。

 筋肉量の維持、増加は、どの年代にとっても重要であり、栄養摂取と運動の2つが鍵となる。

 食事から摂取したタンパク質は、いったんアミノ酸として血液中に取り込まれる。これが筋肉細胞に入ってアミノ酸の濃度が上がると、筋肉を合成するスイッチが入る。

 その際に大きな役割を果たすのが必須アミノ酸であり、その中でも特に重要な「ロイシン」の血中濃度を上げるには、いかに速やかに吸収させるかがポイントとなる。

画像3ヵ月間の運動と組み合わせた場合の筋肉量などの変化

 筋肉を増やすトレーニングとしては、一般に最大筋力の70%、つまり自分が100キロの重りを1回だけ上げられるなら、70キロの重りを使うことが効果的だとされる。米国のスポーツ医学界ではこれを10回、3セット行うことを推奨している。

 これより低い強度でも筋肉は増える。高齢者の方を対象として、40%の負荷で週2回行ってもらったケースでも、12週間で筋肉量が明らかに増えた。

 トレーニングの1〜2時間後には、筋肉中のタンパク質を合成する速度が安静時の2倍以上になる。そのあと筋肉の合成は約2日間にわたって持続する。このような運動を2〜3カ月間続ければ効果がはっきりと出てくる。

 効果的に筋肉量を増やすには、運動とタンパク質摂取の組み合わせが重要になる。さまざまな種類があるタンパク質の中でも、ロイシンを多く含む「ミルクプロテイン」は、運動との相乗効果が高いという研究結果がある。

 日ごろから筋肉トレーニングをやっている男性41人に、運動後に同カロリーの糖質、大豆タンパク、ミルクプロテインを摂取してもらった。3つのグループを比較すると、人によって増え方に幅はあるが、ミルクプロテインの効果が最も高いことが確認できた。

牛乳から高純度分離

 牛乳はタンパク質のほか糖質、脂質、ミネラルや微量のビタミンも含んでおり、さまざまな加工食品の原料としても日本の食生活を支えてきた。長期にわたって価格が安定し、卵と並ぶ「物価の優等生」と呼ばれる。

 牛乳に含まれる「ミルクプロテイン」は、原料となる牛乳から高純度で分離しやすく、衛生管理の技術もほぼ確立しているという。

 牛乳のタンパク質はさまざまな加工食品への利用が期待されている。明治は「ミルクプロテインプロジェクト」として、体内での吸収を速める独自の「速攻吸収製法」を開発し、研究を進めている。

 タンパク質 生命の維持に不可欠な物質であり、体の骨格や筋肉、皮膚などをつくる。食品に含まれるタンパク質はいったん消化、分解されてアミノ酸の形で吸収される。アミノ酸は体内で再合成され、人体を構成するタンパク質となる。アミノ酸には脳・神経機能や免疫機能などを円滑にする働きもある。肉や魚、乳製品、卵などに含まれる「動物性タンパク質」と、大豆や小麦、コメなどの「植物性タンパク質」があり、体内でタンパク質に再合成される比率は「動物性」の方が高いとされる。厚労省は1日のタンパク質摂取量として成人男性60グラム、女性50グラムを推奨している。

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