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がん研究最前線 Q&A紹介

(2015年10月6日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像がんの形状に応じ、精密に照射できる陽子線治療の装置。がん治療の進歩はめざましいが、患者を救うための課題もまだまだ多い=名古屋市北区の名古屋陽子線治療センターで

 名古屋市の名古屋国際会議場で、8〜10日に開かれる第74回日本癌(がん)学会学術総会。がんをめぐるさまざまな情報があふれる中「研究者と市民の懸け橋づくり」が、スローガンの一つだ。市民から寄せられた「がん研究」に関する質問と、それに対する研究者・専門医の回答の一部を紹介する。(編集委員・安藤明夫)

胃がんを40%強抑制

 胃がんの原因のほとんどがピロリ菌と聞きますが、除菌するとどれくらいのがんが抑えられますか? 除菌のデメリットはありますか。=三重県・女性(36)

 ピロリ菌は、胃の酸の中でも生きられます。この菌が胃にすみ着くと、胃・十二指腸潰瘍になりやすくなります。慢性胃炎が続くと、萎縮性胃炎になることが多く、胃がんになりやすくなります。胃がん発症には、ピロリ菌感染が密接に関係しています。

 萎縮性胃炎の程度にもよりますが、除菌により胃がんの発症を40%以上抑えられると報告されています。ピロリ菌に感染したら早急な除菌が必要です。

 除菌の副作用として、湿疹や軟便などのほか、まれに腸管出血の報告もあります。(名古屋医療センター消化器科・岩瀬弘明さん)

遺伝性はごく一部

 乳がんや子宮がんは遺伝するのですか? また、米国人女優のアンジェリーナ・ジョリーさんのように乳房を切除すれば、発症を防げるのでしょうか。=愛知県・女性(40)

 乳がんや卵巣がんには、ごく一部ですが遺伝性のものがあることが分かっています。その遺伝子を持っていると、70歳までに乳がんにかかる可能性が56〜87%、卵巣がんにかかる可能性が27〜44%と言われています。アンジェリーナ・ジョリーさんは、その遺伝子を保有しているために切除を選択しました。

 しかし、保有していても必ずがんになるわけではなく、正常なうちに切除することによる身体への影響や倫理的な問題もあるので、慎重な検討が必要です。また、それ以外にも子宮がんや卵巣がんになりやすい遺伝子があることも分かっています。

 詳しくは、国立がん研究センターがん対策情報センターのサイト「がん情報サービス」をご覧ください。(名古屋医療センター産婦人科・中西豊さん)

両方の掛け算で発症

 がんになる要因として、生活習慣と遺伝はどちらが大きいのでしょうか? がんの種類によって違いがあるのでしょうか。=愛知県・男性(62)

 がんは生活習慣に代表される「環境要因」と「遺伝要因」の掛け算で発症すると考えられています。それぞれのがんによって、環境要因と遺伝要因のどちらがより大きな役割を占めるのかは異なります。

 ただし、ごく一部のがんを除いては、遺伝の要因がどのように発症に関わっているのかは、まだはっきりと分かっていません。精力的に研究が続けられています。

 遺伝カウンセリング外来を開設している医療機関もあります。がんを発症された血縁の方が多い、若いうちに発症したなど心配なことがあれば、対応してもらえることもあります。(神奈川県立がんセンター臨床研究所・成松宏人さん)

 がん情報サービス 国立がん研究センターのがん対策情報センターが開設するインターネットサイト。各種がんの診断・療養の解説、最新治療、全国の医療機関の紹介、予防・検診情報、相談窓口、統計などさまざまな情報を掲載している。「がん情報サービス」で検索。

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