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長期闘病の子の復学支援 名大病院小児科 

(2016年1月12日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

遠隔地の学校と結びテレビ会議 

画像遠隔地の学校とテレビ会議で情報交換する医療スタッフら=いずれも名古屋市昭和区の名古屋大病院で

 医学の進歩で、小児がんの多くが「治る病気」になってきた。それに伴い、治療を終えた子どもたちのきめ細かな復学支援も重要になっている。先進的な小児がんの治療と研究で知られる名古屋大病院小児科(名古屋市昭和区)は、保護者や児童が通う学校と協力し、退院した子どもたちがスムーズに復学できるよう、支援している。 (編集委員・安藤明夫)

 「体育の授業は参加できますか」

 「体調を見ながら、お母さんと相談してください。でも、今の様子なら心配ないと思います」

 昨年12月初め、同病院の会議室と岡山県内の小学校をインターネットのテレビ電話で結んだ会議が開かれた。退院が近づいた子どもの学校生活について話し合う「学校カンファレンス」だ。教師からの質問に医師が答えた。

 難治性の小児がんの男児(6つ)が、同病院で臨床試験中の抗がん剤治療を受けて回復。近く退院できる見通しで、4月にこの小学校に入学する。

 通常、カンファレンスは担任教師らが病院を訪れ、医師ら医療スタッフと面談する形で行う。遠隔地の場合はテレビ電話を利用。昨年春から始まった試みで、全国でも珍しい。

 多くの関係者が会議に参加できるのも利点だ。今回は病院に、男児と母親、主治医の高橋義行准教授(48)や看護師、入院している子どもたちの生活を支える専門職のチャイルド・ライフ・スペシャリストら9人。小学校には、教頭、新1年生の学年主任、担任予定の教師、養護教諭ら。

 感染症への注意、体力、心理面などさまざまな質問が出され、互いに意見を交わした。母親は学校に「病名を隠すつもりはないが、小児がんという言葉が独り歩きして特別な目で見られることがないように配慮してほしい」と要望した。

 小児がんを克服した子どもは、化学療法を受けて半年ほどは免疫力が他の子どもよりも低い。そのため、土いじりを控えるなどの配慮が必要になる。一方、必要以上に特別扱いされると、同級生との溝を生んだり、いじめの原因になる場合も。学校が病気を正しく理解することが重要だ。

 高橋准教授は「テレビ電話による学校カンファレンスは、やろうという気持ちさえあれば、そう難しいことではない。学校、保護者、医療機関の協力関係を強めるためにも、広がっていってほしい」と話す。

学生たちが学習指導

画像入院中の高校生(左)に勉強の指導をする名大医学部保健学科の学生たち

 「ここに来るのが、毎週の楽しみ。大学生活のことも聞けて参考になる」。入院中の岐阜県の女子高校生(16)が笑みを浮かべた。

 昨年6月にスタートした名大生の学習ボランティアの会「パレタス」の活動。小児科の学習室で毎週月曜日夜の2時間、入院中の子たちの勉強を手伝う。医学部保健学科の看護学専攻の学生約20人が、交代で担当している。

 小児科に長期入院する小児がんの子どもは、小学生以下が多いため、中高生は話し相手が少なくなりがち。チャイルド・ライフ・スペシャリストの佐々木美和さん(33)が呼び掛けて、2009年に中高生の会を設立。その学習支援にと要望を受けて、生まれたのがパレタスだ。

 同病院の近くには、長期入院の子に付き添う家族の宿泊施設「ドナルド・マクドナルド・ハウスなごや」が13年に建てられた。その運営を手伝う学生を中心に結成された。

 初代リーダーの3年生、平手優子さん(21)は「1時間で帰る子もいるし、おしゃべりが中心の子もいる。それぞれのペースで利用して、復学後に役立ててくれれば」と話す。

 大学進学について相談を受けることもある。病状によっては、一人暮らしが無理だったり、混み合う電車での通学が難しい場合もある。さまざまな制約があっても前を向く子たちの姿に、学生たちもまた勇気づけられている。

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