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<若尾文彦さんの解読!がん生存率>(上)胃がん 乳がん

(2016年2月5日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
グラフ

 がんは日本人の死因の第1位を占める病気だ。2人に1人はがんにかかるという。がんになった場合、10年後、どれだけの人が生きているのかを示す「十年生存率」が、国立がん研究センターなどの手で初めてまとめられた。同センターの若尾文彦・がん対策情報センター長に、発表されたデータの意味を聞いてみた。(聞き手・吉田薫)

 −最も注目すべき点は?

 「胃がんと乳がんの生存率のグラフを比較すると、これまでの5年生存率ではわからなかったことがみえてきます。乳がんは生存率の高いがんです。しかし、10年後までを胃がんと比べると様相が異なります。乳がんの場合、診断後5年から10年の間にも、それ以前の5年間と同様(のペースで)、がんで亡くなる人がいます」

 「胃がんや大腸がんなどは、見つかって5年たてば観察が終わり、通常のがん検診になるのですが、乳がんは長めに様子をみることが必要だといわれてきました。それが数字で裏付けられたということです」

 −その原因は?

 「乳がんの進行が遅いことが理由の一つでしょう。治療の後にがんが再発して、予後(生死)に影響を及ぼすくらいに成長するまでの時間も長い。5年後以降にも出てくるのです」

 −他に5年生存率と10年生存率の差が大きいのは?

 「肝臓がんです。肝硬変(細胞が変性し肝臓が硬くなった状態)からがんになるので、1カ所治療しても、今度は別のところから新しいがんができます。何年たってもできてくる」

表

 「ただしこれらの数値は全体の平均です。その人がおかれた背景や病気の状態は、それぞれ異なります。一人一人個別に、よくみていかなくてはなりません」

 次回は肺がんを中心に、早期発見が生存率向上に果たす効果を紹介します。

 わかお・ふみひこ 横浜市出身。1986年横浜市立大医学部卒。国立がんセンターに勤め、2012年から現職。正確でわかりやすいがん情報の発信に取り組む。54歳。

 10年生存率 がんの診断を受けてから10年後に、どれだけの人が生存しているかを示す数値。全部のがんを合計すると58%だった。がんは治療から5年間再発しなければ「治った」とみなされるが、今回はそれ以後の経過を統計的に示した。数値は「相対生存率」といい、がん以外の影響を補正している。事故や他の病気で亡くなる人もいるので、生存率58%といっても、実際に生存している人はそれより少ない。また1999年から2002年に診療を始めた症例であり、最近の医療技術や新薬の効果は反映されていない。

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